1996年☆1200円
二十世紀最後の年、十年ぶりに5年生を担任することになりました。しばらく低学年担任がつづいたので、「高学年」の雰囲気がなかなか思い出せません。
「読み聞かせ開き」にどんな本をとりあげようかも、かなり迷いました。大袈裟にいえば、これからの1年間(もしくは2年間)を左右する選書です。手をぬくわけにはいきません。
おもしろい本にしようか、冒険ファンタジーにしようか、はたまた学園ものにしようか。迷った末に決めたのがこの本です。
私=鍋小路かおりは6年生。ゴールデンウイーク明けのクラスに転校生がありました。
野原いちごちゃん。ちょっとかわった女の子です。
自己紹介をうながされたいちごちゃんは、担任の軍司先生に「子どもの権利条約」をどう思うかとつぜん質問したのです。
そればかりではありません。ピアスをしています。「いちごカンパニー」という会社の代表をしています。携帯電話で株取引もしているのです。
そんな女の子──それもベトナム人のハーフです──がクラスにいるとどうなるか、当然のようにいじめられます。PTA会長を父にもつ黒倉さんを中心に、陰湿ないやがらせがはじまりました。
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「ない、リュックがない!」
ロッカーを開けたとたん、いちごちゃんが絶叫した。
ほんとうにそれは、絶叫といっていいさけび声だった。
「ない!」
いちごちゃんの顔は、真っ青で、からだもふるえていた。
・ ・ ・
綾ちゃんが、いちごちゃんに近づこうとしたとき、
「リュックぐらいでオーバーねぇ、外国の人は」
黒倉さんが、みんなに聞こえるような声でいった。
そのひとことで、綾ちゃんの足が止まった。
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どんないじわるにもへこたれなかったいちごちゃんでしたが、リュックがなくなり大きなショックを受けてしまいます。中には大切なたいせつなものが入っていたのです...。
異質のものを受けいれる心、いじめにたちむかう勇気、そして阪神淡路大震災による心の傷も織りこみながら、物語はすすんでいきます。
この本を読み聞かせるなら、たとえば「子どもの権利条約」をどう考えるか、あるいはクラスの子がピアスをすることを可とするか不可とするか、担任としての考えをもっておいたほうがよいでしょう。
そういうメッセージを伝えたくて本を選ぶことはあまりないのですが、新しく出会った5年生と真剣勝負をする決意表明として、思いきって読んでみました。12回ほどで読みきることができます。
ちなみに、いちごちゃんのつぎに読み聞かせた本は『五体不満足』(乙武匡洋/講談社)でした。
↓
『スーパー・ガールいちごちゃん』
2004-04-09-Fri
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