2002年☆620円
黒いマントにシルクハット、片眼鏡といういでたちで怪盗道化師に変装した西沢書店のおじさんは、こんなビラをつくりました。
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│ 怪盗道化師(ピエロ)参上!! │
│ なんでもぬすみます。ただし─ │
│ │
│ ☆ 世の中にとって値打ちのないもの
│
│ ☆ 持っている人にとって値打ちのないもの
│
│ ☆ それをぬすむことによってみんなが笑顔になれるもの
│
│ │
│ れんらく先は 西沢書店まで │
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*本書では「道化師」にかならず「ピエロ」とルビがふってあります。
以下、「道化師」は「ピエロ」と読んでください。
西沢のおじさんのところに5年生くらいの礼儀正しい男の子がやってきて、
「ぼくの悪い運動神経をぬすんでほしいのです」
と頼みました。
その男の子、真一くんは自転車に乗れなかったのです。
西沢のおじさん、いえ、怪盗道化師はさっそく真一くんをよびだし、自転車の特訓をはじめます。
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道化師が、マントの下から『だれにでもわかる、やさしい自転
車乗り方入門』の本をだしました。太陽の光をうけてかがやく金
色の表紙の本は、とてもたのもしげに見えました。
「では──。」
道化師が、さっそく本をひらきます。
一ページめは、まっ白でした。
つぎのページをめくると、またまたまっ白でした。
すこしばかりおかしいなと思いながら、道化師は、ページをめ
くりつづけました。
しかし、どれだけ進んでも、やはりページは、まっ白でした。
・ ・ ・
そして、最後のページまでさがして、たったひとこと書いてあ
ったことばは、
《根性!》
──これだけでした。
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「書いてあったことばは、」
でたっぷり間をとり、
「根性!」
といくらか声を落とし、しかしはっきりと読みあげると、教室にどっと笑い声がひろがりました。2年生にもこんなユーモアが通じます。
クラスの本ぎらいの子どもたちを夢中にさせる本をさがすうちに、自分で物語を書いてしまったという小学校教師が“はやみねかおる”です。
その筆からは、ご存知「名探偵夢水清志郎」、虹北みすてり商店街の「少年名探偵虹北恭助」、新シリーズで主役の座を射止めた「怪盗クイーン」など、魅力的なキャラクターが生みだされてきました。
はやみねデビューは26歳のとき。手書き自家製本の原稿が児童文学新人賞に入選して出版されたのが『怪盗道化師』でした。
それから12年、品切れで入手困難だったまぼろしのデビュー作が「青い鳥文庫」で復刊されました。本書にはオリジナルの私家版から半分の短編19編が収められています。
1日5分ずつ、2〜3日で1話を読み終えることができます。
19話すべてを読むことはありません。
第1話 小さな依頼人
第5話 影をぬすむ男
第7話 雪ダルマ物語
第8話 自転車泥棒(上の真一くんの話です)
第13話 春夏秋冬
第18話 最後の仕事
このくらいでおよそ20日ぶんになります。
「おもしろかったら、あとは自分で読んでね」
子どもたちが近い将来どこかで“はやみねかおる”に再会してくれることを願いながら、読み聞かせを終えました。
4年生のクラスでとりあげたときには、その後“はやみねファン”が激増し、清志郎やクイーンが教室で大ブレイクしました。
2年生には少し手強いかと思いましたが、本書『怪盗道化師』のユーモアに笑える子どもたちです。数人の子が青い鳥文庫版のはやみね作品を手にするようになりました。
大人の“常識的な判断”で子どもの力をみくびってはいけませんね。
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『怪盗道化師』
2004-03-01-Mon