とっぷぺーじ

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図書室

おふぃす ひげうさぎ




毎日5分ずつ、すきまの時間をつかって本を読み聞かせています。

じっと見つめる子どもたちの目と、物語に聞き入る教室の雰囲気が大好きです。



このページでは、5年生の1学期にとりあげた本をご紹介します。

書店や図書館で見かけたら、手にとってみてください。



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児童書新刊情報



『竜退治の騎士になる方法』(岡田淳/偕成社)

2003年☆1000円


 子どもたちに“本物”にふれてほしいという願いから、プロの劇団や演奏家をおよびして舞台で演じていただく行事があります。学校では「芸術鑑賞」「演劇教室」などとよんでいます。
 読者のみなさんも、小学生のころそんなステージをたのしんだ記憶があるのではないでしょうか。
 (ちなみに、勤務校では今年度は「人形劇団ひとみ座」に来ていただきました。あの“ひょうたん島”のひとみ座です!)

 物語の舞台はそんな「観劇会」を翌日にひかえた2学期の小学校です。6年生の「ぼく(津村康男)」と「優樹(井口優樹)」は、忘れ物をとりに放課後の学校に忍びこむことにします。
 忘れ物──それは卒業文集を書くための宿題で、「将来の夢」と「その夢を実現させるために、今どんなことをしているか、あるいはどんなことをしていけばよいと思うか」を書くためのプリントでした。

 3階にある教室に近づくと、ふだんなら閉まっているはずの戸が開いています。そっとのぞくと、だれかいるようです。

   ………………………………………………………………………………
    教室のちょうどまんなかあたりの席に、むこうをむいて、つま
   り運動場側の窓のほうへ顔をむけて、だれかがすわっていた。先
   生ではない。おとなの人のようだ。茶色の髪の毛をうしろで結ん
   でいる。フードのついた、黒っぽいマントのような上着を着てい
   た。
    とつぜん、その人が声をだした。むこうをむいたまま。

   「きみたちがリュウでないことは、その足音でわかっていたよ。」

    男の人の声は、めちゃくちゃによくひびく大声だった。その声
   にぼくたちは力がぬけ、すわりこんでしまった。
   ………………………………………………………………………………


 「きみたちがリュウでないことは、その足音でわかっていたよ」

 このセリフは、本の中ではゴシック体で書かれています。明朝体のほかの部分にくらべて、ひときわ目立ちます。

 そこで、それまで淡々と読みすすめ、だれがいるのだろうとじゅうぶん興味をひきつけたところへ、ここぞとばかりに演劇ふうの声を出して読みました。息をたっぷり吸いこみ、はりのある声を腹の底から出したのです。

 「きみたちがリュウでないことは、その足音でわかっていたよ」

 教室にひびきわたる大声に、聞いている子どもたちもわっとおどろき、それからふわぁっと力がぬけたように表情がくずれます。
 ...チョー気持ちいい! だから読み聞かせはやめられません。

 さて、その男の人はどうやら明日の観劇会の劇団の人のようでした。「ぼく」はそれに気づきました。

 関西弁で話すその人は、
 「おれは、竜退治の騎士やねん」
 と名乗ります。
 見れば、マントからブーツから腰の剣から手に持つ楯まで、たしかに西洋人ふうのいでたちで、「竜退治の騎士」の役をやってもおかしくなさそうです。

 けれど、学校にあまり興味がなく、先生の話をほとんど聞いていない優樹は観劇会のことを知りません。ふにおちない顔で、優樹はその人に名前をたずねました。

   ………………………………………………………………………………
   「……今ここで名前をゆうたら、きみら笑うと思うんや。」
   「ぼくら、そんな失礼なことしません。なあ。」
    うながされて優樹もうなずいた。でもぼくはもう笑いそうだっ
   た。
   「いや、きみら、ぜったい笑うわ。」
   「ほんまは西洋人とちゃうから、そんなことゆうて、名前をいわ
   んとこ思てんのとちゃいますか?」
    その人はため息をついたようにみえた。
   「わかった。ゆうたらええんやろ。」
   「なんちゅうんですか?」
   「……ジェラルドゆうねん。」
    ぼくと優樹は爆笑した。
   ………………………………………………………………………………


 「ジェラルドー ゆうねん」
 「ド」にフェルマータをかけ、半拍あけて「ゆうねん」を読みました。
 「ぼく」と優樹に同化して聞いている子どもたちも、大爆笑です。

 ジェリー ──ジェラルドは自分をそう呼んでくれと言います── と優樹、そして「ぼく」は、どうしたら「竜退治の騎士」になれるかをめぐって話していくことになりました。関西弁で、ときに演劇用の声をはりあげながら...(そこだけは標準語で、紙面ではゴシック体です)。

 そんな話をしている最中に、おどろくことがおきました。ジェリーがとつぜんマントをひるがえし、廊下へとびだしていったのです。

 「そっちか!」(ゴシック体!)

 うそが見抜かれそうになり、バツが悪くなって逃げたのでしょうか。
 いえ、ジェリーはもどってきました。
 その姿は、どうも竜とたたかっているようなのです。ほんものの竜と...
 あとは読んでのおたのしみ。

 本書を読んでからしばらくのあいだ、教室では演劇ふうの発声が流行しました。

 「きみたちが問題を解けていないことは、その鉛筆の音でわかっていたよ」
 (もちろんゴシック体!)

 流行の仕掛け人は、もちろん担任でした。


 著者の岡田淳(おかだじゅん)は、1947年生まれの小学校の図工の先生だそうです。

 『こそあどの森シリーズ』『放課後の時間割』『びりっかすの神さま』などなど、子どもも大人もひきつけてやまないファンタジーをつぎつぎとうみだしている作家が、ぼくと同じ仕事をしているとは!
 それも、文章だけでなく挿絵も描くとは。
 (本書の表紙には「作・絵 岡田淳」とあります)

 世の中にはすごい先生がいるものです。
 本を1冊出版したくらいでうかれていては、笑われてしまいますね。


 『竜退治の騎士』にもどってしめくくりましょう。

 5年生には、エピローグに書かれたエピソードは実感できないと思います。
 でも、それでいいのです。
 5年、いや10年、15年たって読み返したとき、あのとき思いえがいた夢、「竜退治の騎士」になる夢がよみがえるかもしれません。

 そんなはるかな期待をこめて、5年生の6〜7月に読み聞かせました。
 毎日5分ずつで20回ほど。
 高学年の教室で、いかがですか。
 トイレのスリッパをそろえる子が出るかもしれませんよ。

    ↓

  『竜退治の騎士になる方法』

2004-12-03-Fri



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