2001年☆980円
黒地に太い白抜き文字の背表紙です。下三分の一には黄色い帯が巻かれ、「5年生向」という紺のこれまた極太文字。
黒地に白、黄色に紺...けっして広いとはいえない書棚にこの本の背表紙がずらっと5冊もならんでいるのですから、なにしろ目立ちます。手にとってくれ、読んでみてくれと、本が自己主張していました。
こうして吸い寄せられるように手にしてしまったのが、今日ご紹介する本『ブンダバー』です。
夏休み、書店の児童書コーナーを散歩していたときのことでした。担任している5年生のクラスで2学期の最初に読み聞かせる本をさがしていました。
9月は第4土曜日に運動会があります。残暑のなか、ソーラン節の練習がつづいているはずです。汗をびっしょりかきながら、少し疲れた毎日をすごしているにちがいありません。
重いストーリーは読むほうも聞くほうも願いさげです。カラッと明るい物語に、クスッと笑えるユーモアがまぶしてあれば申し分ありません。
手にした『ブンダバー』は、そんな条件にぴったりの本でした。
◇
おしじさんは古道具屋さんです。おくさんのリンさんといっしょに、ホルムの町でお店を開いています。
オットさんにもらった古いタンスをおしじさんが修理し、きれいにみがきあげると、不思議なことにタンスのとびらがひとりでに開き、中からまっ黒なネコが飛びだしてきたのです。
それだけではありません。
「よく見てよぉ。ネコですよぉー! 名前は、ブンダバーっていうの。男の子だよ! よろしくニャー!」
そのネコが人間のことばをしゃべったのです。
おしじさんとリンさんは気絶してしまいました。
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おしじさんは、ベッドで目をさましました。
頭の上の窓からは、月が見えます。横には、リンさんがねむっ
ています。
「なぁーんだ! 夢だったのか」
おしじさんは、ほっとしました。
夢だということになると、おもしろい夢だったなぁ、と思えて
くるからふしぎです。
「ふふふ、あんなネコがいたら、楽しいだろうなぁ。えーっと、
名前は、なんだっけ?」
「ブンダバー!」
足もとから、声がしました。
「うわっ!」
おしじさんは、とびおきて、部屋の電気をつけました。
夢とおなじネコが、ベッドについているかざりぼうのてっぺん
に、ちょこんとのっかっています。
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無邪気で天真爛漫、茶目っ気たっぷり...ブンダバーにぴったりの形容語です。
そんな気持ちをこめて、思いきり明るく、ちょっと幼い感じがする声で、
「ブンダバー!」
と読みあげると、教室にきらきらした笑いがひろがりました。
やった!
読み聞かせをつづけながら、内心ではガッツポーズをしていました。予想したとおりのところで子どもたちが笑ってくれたからです。読み聞かせ冥利につきる、至福のひとときでした。
◇
おしじさんとリンさんをはじめ、女優をめざす14歳の女の子モモ、モモの飼い犬の牧用犬ドッグン、ブンダバーが住んでいるタンスのタンちゃん...脇役も心やさしくすてきな“人”ばかりです。
ブンダバーとモモの出会いと交流を軸に、ブンダバーがホルムの町の人たちと仲よしになるための作戦を二人で考えながら、第1巻のストーリーがすすんでいきます。
◇
はじめて手にしたときには、内容も、活字の大きさも、挿絵の雰囲気も、5年生にはやさしすぎるように思いました。
けれど、読みすすめるごとに子どもたちが引きこまれていくのがはっきりと感じとれます。
2週間もたつと、ブンダバーはクラスの人気者になり、まるで教室に住んでいるかのように子どもたちと仲よしになってしまいました。
読み聞かせは第1巻でおしまいと知った子が、近くの公立図書館で2巻、3巻と続編を借りてきて読んでいる姿も目にしました。
ガタガタ!
ギー!
掃除用具の入ったロッカーがひとりでに開き、
「へへへ、ブンダバー!」
と言いながら、まっ黒なネコが出てきそうな5年1組です。
◇
第1巻の発売が2001年5月。以来、シリーズとして書き継がれ、この6月に6冊目が出版されました。
ネットで検索したかぎりでは、著者 くぼしまりお(窪島リオ)
には絵本の訳書はありますが、児童書の著作はこのシリーズだけのようです。
毎日5分ずつで15回。
ブンダバーとおしゃべりして元気をもらい、運動会の練習にむかっていく3週間をすごしました。
◇
ところで、ブンダバーとモモが出会う場面で...このエピソードは次回にとっておきましょう。
↓
『ブンダバー』
2004-10-01-Fri
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