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おふぃす ひげうさぎ




毎日5分ずつ、すきまの時間をつかって本を読み聞かせています。

じっと見つめる子どもたちの目と、物語に聞き入る教室の雰囲気が大好きです。



このページでは、5年生の3学期にとりあげた本をご紹介します。

書店や図書館で見かけたら、手にとってみてください。






『ユウキ』(伊藤 遊/福音館書店)

2003年☆1300円


 転校は、子どもにとって人生の一大イベントです。

 そして、転校は、転校する子ども自身にとってだけでなく、その子がいなくなるクラスの子どもたちにとっても、その子が新しく入るクラスの子どもたちにとっても、さらにその子どもたちを担任する教師にとっても、大きな転機となるものです。

 ですから、転校をあつかった物語がたくさん書かれます。波風のたたない平凡で安定した日常をおくる集団に、ドラマが生まれるきっかけとなるからです。

 今回はそんな「転校」をモチーフにした高学年むきの本をご紹介しまょう。


 舞台は札幌にある南ケ丘小学校。
 入学してから卒業するまでずっとここに通いつづける子どもが5割に満たない、というほど転勤族の多く住む学区にある小学校です。

 「転校」がいわば日常茶飯事になっている学校に通うケイタは、5年生のおわりに親しい友だちとの別れを経験しました。サッカー仲間だった「ユウキ(=勇毅)」が転校してしまったのです。

 5年生のはじめに転入してきた勇毅とはたった1年だけのつきあいでしたが、ケイタにとって大切なたいせつな友だちでした。

 新学期、担任もちあがりで6年生になったケイタは、クラスに転校生がやってくる予感がしていました。
 名前も予想していて、それがあたるような気がしています。

 その名前とは...「ユウキ」です。
 なぜかというと、これまでケイタと仲よくなった友だちの名が、3人とも「ユウキ」だったからです。

 ユウキ=祐基とは1年生のとき。二人でカードバトルに熱中しました。
 ユウキ=悠樹は2年生から4年生の1学期まで。ミニ四駆仲間でした。
 そして5年生の1年間はユウキ=勇毅、サッカー少年でした。

 祐基が転校すると悠樹が転入してきて、その悠樹がいなくなってしまったあと、勇毅が転入してきたのです。けれど、その勇毅も...。
 3人のユウキが3人とも転校してしまい、ケイタのもとを去ってしまっていたのです。ですから、もしかすると6年生でも、という思いがケイタにあったのです。

 教室に先生がやってきました。

   ………………………………………………………………………………
   「転校生だ……」
    だれかが言うと、急にクラスがざわめきだした。伸び上がって、
   ドアの外をうかがうやつもいる。
    転校生はやっぱり来たんだ。おれのいるこのクラスに。それは、
   もしかすると……。
   (ユウキ)
    呼び慣れた名前を心の中で呼んでみた。

              [ 中 略 ]

   「静かに。えーと、じゃあ、まず山本くんから紹介します」

              [ 中 略 ]

   「旭川の小学校から転校してきた、山本ヒロノブくんです」
   (えっ……。ユウキじゃないのか……)

              [ 中 略 ]

    ヒロノブが脇によけると、代わって女の子が進み出た。ものお
   じしない、明るい笑顔。転校慣れしていると、すぐにわかる。

              [ 中 略 ]

    歯切れのよい口調で、彼女はあいさつした。
   「はじめまして。野田優希です。長野県から来ました」
    いま、なんて言った? 聞きまちがいだろうか?
   「男の子みたいな名前ねって言われるんだけど、自分では気に入
   っています。前の学校では、みんなに『ユウキ』と呼ばれていま
   した。みなさんもそう呼んでください」
   (そんなバカな……)
    気がつくと、おれは机に両手をついて立ち上がっていた。
   ………………………………………………………………………………


 『代わって女の子が進み出た』

 ここを読むと、聴いている子どもたちが近くの子と目配せをはじめました。
 「きっとその女の子が“ユウキ”だよ」
 とアインコンタクトで話しているようです。

 『はじめまして。野田優希です』

 「やっぱりねぇ」
 にこにこした表情からそう言っているのが読みとれて、のってきたのがわかります。語る声にも自然と力が入ります。

 地味な装丁の本です。活字も小さめで、本文200ページほどあります。
 ふつうの子にはすこしばかり敷居が高い本です。本棚に背表紙がならんでいるだけなら、おそらくクラス35人のだれ一人として手にとらない本でしょう。

 けれど、主人公がサッカー少年であること、4人目の「ユウキ」が女の子であったことなど、すこし読んでみればおもしろく、高学年の子どもたちの興味をひく設定であり内容になっています。

 ですから、こうして担任が教室で読み聞かせていくことが必要なのです。
 子どもたちが「地味な本だけど読んでみよう」と思うきっかけができるからです。

 物語はこのあと、ケイタとユウキ=優希とのかかわりを軸に、ケイタのサッカー友だちであるカズヤ、学級委員のヨシカワたちとの交流もからめながら、転校生がクラスになじんでいく悩みやむずかしさ、うけいれる側に生じる混乱と葛藤をじっくりと描いていきます。

 ユウキにたいするケイタのあわい“恋心”も、物語の展開にいろどりをそえていて(男の子がひそかに期待しているのがこれなんですね)、多くの子の共感をえながら読みすすめることができました。


 5年生の3月に読み聞かせた本です。

 1月から読みつづけていて根強い人気のあった『ほうかご探偵隊』を2月いっぱいでうちきり、あえて本書をとりあげました。

 3月は授業日数が18日しかありません。
 なんとか最後まで読んであげたくて、「毎日5分」がいつのまにか「毎日6分」「毎日7分」と伸びていきました。

 子どもたちは、登場人物の心のひびきあいを自分のこととして感じながら、すこし早口で読む物語を辛抱づよく聴いてくれました。


 3月25日。

 3学期終業式であり2004年度修了式でもある日に、担任していたT小学校5年1組からユウキ...ではなくシオリが転校していきました。

 シオリちゃんの通うことになる京都の新しい学校にケイタやカズヤ、ヨシカワがいることを願いつつ、公立小学校の学級担任として読み聞かせたさいごの本をとじました。

 つたない読み聞かせに1年間つきあってくれた子どもたちが、大きな拍手をして称えてくれました。

    ↓

  『ユウキ』

2005-05-13-Fri



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