1983年☆1100円
はじめに、わたくしごとを少々。
ぼくはクリスチャンホームに育ちました。父はプロテスタント教会の牧師です。
少年期は高度成長のまっただなか。
「大きいことはいいことだ」
「オー!、モーレツ」
「はっぱふみふみ」
に象徴される時代でした。
クリスマスはごちそうにケーキ、ツリーをかざってイルミネーションを点灯し、サンタクロースにプレゼントをお願いする、という風習が一般家庭にもひろがりはじめていました。
「クリスマスプレゼント、なにがほしい?」
「サンタさんに『〜ください』ってお願いしたんだ」
「うちはクリスマスとお正月あわせて、〜にしてもらうつもり」
友だちどうしでそんな会話がふつうになされるようになっていました。
しかしながら、わが家には“クリスマス”はありませんでした。
いえ、正確にいうと、ごちそうもケーキもツリーもイルミネーションも、そしてプレゼントも...そう、“クリスマスっぽいもの”はありませんでした。
“教会の子”なのになぜうちには“クリスマス”がないのだろうと、子ども心に思ったものです。
◇
現任校はキリスト教主義の学校なので、毎朝、子どもたちといっしょに礼拝をまもっています。礼拝では、職員が輪番で10分ほどのお話をすることになっています。
クリスマスのすこし前に当番がまわってきたので、絵本を題材にしてクリスマスのお話をすることにしました。そのときに読んだのが、今回とりあげた『はじめてのおくりもの』です。
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ひつじかいの少年サムは、けがをしたこひつじをお父さんにもら
います。サムはこひつじにプチと名をつけ、てあてします。プチ
のけがはよくなり、二人はなかよしになります。
ある晩、ひつじかいたちのもとに天の使いがあらわれ、ベツレヘ
ムに救い主がお生まれになったことをつたえます。
サムもいっしょにベツレヘムに行くと、生まれたばかりのイエス
さまが飼い葉おけにねむっていました。
サムは寒そうなイエスさまになにかプレゼントしたくて、なやみ
考えたすえに...。
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というあらすじの絵本です。
クリスマスのできごとと、キリスト教でたいせつにしているクリスマス本来の意味がシンプルに、そしていもとようこの絵によってあたたかく表現されています。
初版発行が1983年。版を重ね、手元にある本の奥付には「2002年11刷」となっています。それだけ読みつがれている絵本なのでしょう。
◇
さて、クリスマスはキリストの誕生を祝う日です。神がひとり子をわたしたちのもとにつかわしてくださった、その恵みに感謝し、喜びをわかちあう日です。キリスト教ではそう教えます。
この日にプレゼントのやりとりをするのは、クリスマスの喜びをわかちあうことを象徴したものです。ですから、プレゼントがなくてもキリスト教のクリスマスはなりたちますし、プレゼントがクリスマスのメインイベントとはなりえません。
かざりつけること、プレゼントのやりとりをすることに気をとられてしまうと、クリスマス本来のメッセージがうすれてしまいます。
牧師である父が“クリスマスっぽいもの”をかたくなまでにこばむことで家族に伝えたかったのも、そういうことだったのだと、いまになって思います。
ここまで書けば、ひつじかいの少年サムがイエスさまにプレゼントしたものがなんだったのか、みなさんもおわかりになりますね。
◇
礼拝では全校児童──といっても150人ばかりですが──の前でお話をするので、これまで担任として30人ほどの学級でおこなっていた読み聞かせのかたちはとれません。児童席が横に広く配置されているので、絵本を開いて左右にふって見せながら、というのも無理があります。
そこで、挿絵を拡大カラーコピーして紙芝居をつくり、お話することにしました。
もとの絵本はぜんぶで11場面あります。そのなかから6場面をえらんで紙芝居形式につくりなおし、裏に文章を書きました。
もとの文章では説明や描写が最小限におさえられているので、饒舌にはならないようにしながらも、聞き手の理解をたすけるためにすこしばかり文章を書きくわえることにしました。
たとえば、つぎのように一文をつけたして読みました。
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「いたいけど、ちょっとがまんするんだよ。
おとうさんは、ぼくがけがをしたとき、
いつもこういうんだ」
サムは、こひつじにプチというなまえをつけました。
そうしてプチのけがは、だんだんよくなっていきました。
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「いたいけど、ちょっとがまんするんだよ。
おとうさんは、ぼくがけがをしたとき、
いつもこういうんだ」
そう言って、サムはこひつじのてあてをしてやりました。
サムは、こひつじにプチというなまえをつけました。
そうしてプチのけがは、だんだんよくなっていきました。
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絵を間引くことも、カラーコピーして紙芝居にすることも、文章を書きくわえることも、どれも「絵本の読み聞かせ」としては禁じ手ではありますが、いっぺんに150人に伝えるにはしかたありません。
「『クリスマスプレゼント』って、なんでしょう」
とひとことだけ前置きをして、紙芝居をとりだしてお話をはじめました。
クランツのろうそくにともった4本のあかりのもと、子どもたちはクリスマスのメッセージにじっと聞きいってくれました。
◇
職員室で話題になったエピソードをひとつ。
「うちの子に『クリスマスプレゼント、なにがいい?』って聞いたら、
『平和』
って言うんです。先生、なにかよいお知恵はないでしょうか」
あるクラスの担任にこんな相談があったそうです。
この話を聞いて、世の中のおとなすべてにたいする子どもからの問題提起だと、ぼくはうけとりました。
みなさんなら、どんなふうにおこたえになりますか?
みなさんなら、どんな「平和」をプレゼントなさいますか?
◇
明日は12月25日。
読者のみなさまにも、心から、メリークリスマス!
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『いちばんはじめのおくりもの』
2005-12-24-Sat
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