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web『たまてばこ』特集

日刊ひげうさぎ

1年生1学期の学級通信はこう書くこうつくる



     





ピンクの数字からリンクしています。

画面をスクロールすると000(創刊号)から順に読むことができます。

000 001 002 003 004 005 006 007 008 009
010 011 012 013 014 015 016 017 018 019
020 021 022 023 024 025 026 027 028 029
030 031 032 033 034 035 036 037 038 039
040 041










『日刊ひげうさぎ』創刊!

「ちょっとちょっと編集長。いびきなんかかいて、のんきに昼寝している場合じゃないですよ」
「ふぁー、もうこんな時間か。きのうの晩は、緊張して緊張して、よく眠れなかったからなぁ」
「でもねえ、ぼくの名前をつけた通信を発行するってはりきっていたでしょう。そろそろワープロを始めてくださいよ」
「よしよし。通信のタイトルは『日刊ひげうさぎ』と...」
「“ひげうさぎ”はいいとして、“日刊”なんてタイトルつけて大丈夫なんですか? KANAちゃんだってまだ10か月になったばかりでしょう」
「まあ、なんとかなるだろう。“日刊”と宣言してしまえば、それなりに続くものさ。去年だって、1年間で300号ちかくも発行できたんだからね」
「それもそうですね」
「ただ、問題が一つある」
「なんですか?」
「こんどのクラス37家庭の中に、去年の『はてな通信』の読者が2家庭あるんだな。授業や通信に同じネタを使うことができないのがひじょうにつらい」
「そんなことで弱音をはく編集長じゃないでしょう。いつも言っているじゃないですか、『なにごとも教師修業だ』って」
「こりゃあ一本取られたな。かわいいかわいい奥さんも応援してくれることだし、また1年、毎晩ワープロとにらめっこするか」


 お子さまのご入学、心よりおめでとうございます。
 大切に大切に育ててこられたお子さまを、1年間、たしかにおあずかりいたしました。

 小学校1年生は、お子さまが義務教育と出会う最初の学年です。それを担当することがどれほど厳しいものであるか、責任の重さを痛感しています。

 行き届かないところの多々ある教師ですが、保護者の皆さまのご支援とご協力をいただき、精一杯努力して日々の授業や学級経営を進めていきたいと思っています。

 どうぞよろしくお願いいたします。


 マジメな自己紹介。

氏  名
○○○○(男)


生年月日
19○1年○月○日(自称22歳)
[去年は「18歳」と言っていたけれど...]

教職経験
9年目(2→1→2→5→6→5→6→2→1)
[みごとなキセル状態! 中学年の経験ゼロ]

家  族
つれあい1人(ピアノ教師)
娘1人(今日、はじめて3歩あるいた!)
息子1匹(3歳の虎猫)

住  居
ロータリーそばのマンション
[学校まで自転車で15分、歩いても25分なのに、ついついバイクに乗ってしまう]

趣  味
本を買って、積みあげること
並んだ本の背表紙をながめること
学級通信を書くこと

モットー
「常識」を疑うこと
ものごとのスジを通すこと
[人にはよく“ひねくれ者”と言われる。哲学・倫理学を専攻していたからか?]


 自分で言うのもなんですが、とにかくヘンな教師です。『日刊ひげうさぎ』ともども、1年間おつきあいください。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.000-1993-04-06



 いまから10年前、2度目の1年生を担任したときの学級通信である。

 『日刊ひげうさぎ』というタイトルは、その前年度につかいはじめた“ひげうさぎ”というキャラクターを前面(全面)に押し出したもの。不得手なイラストに挑戦し、通信の内容にあわせて“ひげうさぎ”の絵を毎号かならずどこかに描いていた。
 持ちあがった2年生の最終日まで、発行した通信は2年間で600号になる。

 今回は、入学から約2か月、子どもたちが学校生活に慣れ始めるところまでを連載する。名づけて、

  1年生1学期の学級通信はこうつくる

 大げさかな。


web『たまてばこ』 No.372 2003-05-17-Sat


とんでもない担任、かな?

 教室の座席をお知らせします。

[座席表省略]


 男女混合の五十音順に、窓側から2人ずつならんでいます。
(クラスの名簿はすべてこの「混合五十音順」になっています。ちなみに、女子19人・男子18人で合計37人のクラスです)

 教室が落ちつくまで、当分のあいだ(1か月くらい?)この座席で学習・生活をすすめます。
 その後、男女がとなりあうような座席に変更し、4〜5人のグループを編成する予定でいます。


 上の座席表は、わざと漢字だけで書きました。

「お友だちとなかよくするんですよ」
 と、お子さんに口ぐせのように言うおうちの方への宿題です。まずは1組37人全員の名前が読めるようになってください。そして、2年生に進級するときには、37人全員の顔と名前が一致するようになってください。

 親どうしがなかよくなれば、子どもどうしも自然になかよく遊ぶようになります。とくに、幼稚園・保育園時代の友だち関係をどんどん広げていってくださるようお願いします。
(このあたりのことは、13日の懇談会でお話したいと考えています)


 ところで、漢字だけの名前でどうやって読み方を知るのか、と疑問に思われるかもしれません。

 このあたりのところ、ぼくは根っから不親切なので、それぞれで工夫なさってみてください。お子さんとの会話から貴重な情報が得られると思います。

 手とり足とりしながら一から十まですべて教えるようなことは、保護者にはもちろん、お子さんにたいしてもしないつもりです。

 「自立と自律」が1年間の目標です。


 今朝、教室に入ってくる子どもたちのようすを見ていました。
 早く来た子から順に、ロッカーの名札を見て自分のランドセルをしまっていました。

 あとから来た子の中に、ランドセルを手にぶらさげて、
「これ、どうするのー?」
 とたずねてくる子がいました。一人ではなく、何人もいました。

「困ったことがあれば、なんでも先生に言いなさい」
 とは言ったものの、これには少々まいってしまいました。ロッカーにはすでに多くのランドセルがならんでいて、ちょっと見まわして考えればどうしたらよいかわかるはずなのに、です。

 「勉強」の力と同時に、こういう生活の力も育てていきたいと考えています。


 前号、本号と続けて読まれると、「とんでもない先生にあたったな」と思われるでしょうか。

 書くものは「とんでもない」のですが、ほんとうはそうでもありません。厳しいところは厳しいけれど、けっこうやさしいところもあるのです、自分で言うのもなんですが...。
 13日にいらして、実物をご覧になってください。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.001-1993-04-07


web『たまてばこ』 No.373 2003-05-18-Sun


ほのぼの1年生 Part.1

「ねえ先生、給食はいつから? 早く食べたいなぁ」
「休み時間はー? 早く遊びたいなぁ」
「わたしは、早く勉強したい」
「ぼくねー、早く帰りたいよー」

「そうかそうか。早く給食食べたい、外で遊びたい、勉強したい、帰りたいって、やりたいことがいっぱいで、いいねー」

「わたしねー、おやつ食べたい!」

 爆笑のひとことでした。言葉の主は活発な女の子、名前は伏せておきましょう。


「先生、わたしのランドセルをしまうところがないの...」
 と訴える子がいました。

「よしよし、さがしてみようか」
 と言いながらさりげなくロッカーを見てみると、その女の子の名札のついたロッカーは空いています。ほかにもランドセルの入っていないロッカーがいくつかあったので、その子が名札を見落としたのだろう思いました。

「これは、あなたの名前?」
「ううん、ちがう」
「じゃあ、これは?」
「ちがう」
 とたしかめていきました。

 そして、4つ目にその子の名札を指さしてみると、
「これ、わたしの名前だけど...」
 自分のロッカーには他人のランドセルが入っているというのです。ぼくの目には、その子のロッカーはたしかに空っぽで、空いているように見えるのですが...。

 話をよく聞いてみて、ようやく合点がゆきました。
 その子は、名札の上が自分のロッカーだと思っていたのです。ぼくは名札の下に入れるのが当然だと思っていたので、こんな誤解が生まれたのでした。


「はいたつ屋のみなさん、おうちの人からのおたよりがあったら、これから先生のところに届けてください。『おたよりノート』にお手紙が書いてある人だけ、持っていらっしゃい」

 パラパラッと、何人かが「おたよりノート」を広げて持ってきました。
 持ってきた子の「おたよりノート」を見ると、最初のページにおうちの方からの文章が書いてある子もいるのですが、何も書いていない子も持ってきています。
 さて、こんどはどんな誤解が原因なのでしょう。

「ほらね、ここには何も書いてないでしょう。だから今日は先生に出さなくていいんだよ」
「でも、こっちに書いてある...」

 指さした表紙裏のページを見ると、たしかに「連絡」が書いてあります...それは、もともと印刷されている使い方の例文でした。


 1年生を担任する先生が、よく、
「宇宙人を相手にしているようだ。まるで言葉がつうじない」
 と言います。

 まだたったの2日経過しただけですが、まったくそのとおりだと身をもって感じました。いつになったら通じあえるのでしょうか。
(でも、こういうのは1年生の担任だからこそ経験できること。ほのぼのとしていて、いいですねー)

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.002-1993-04-08


web『たまてばこ』 No.374 2003-05-19-Mon


実録・最初の3日間

4月6日(火)
  1.  プリント、書類などの提出のしかたの指導。
    「みんなは、はいたつ屋さんです。とちゅうでなくしたりしないで、おうちの人から先生へ、先生からおうちの人へ、ていねいに届けてください。プリントは、朝、みんながそろってから集めます。それまで出さずに持っていてください。ランドセルから出して、引き出しに入れておくとよいです」
     この日に集めたもの3種類。

  2.  プリント、通信などの配り方の指導。最前列の子に列の人数分だけプリントを渡し、自分のぶんを1枚とってうしろへ回させる。
     この日に配布したもの3種類。とくに『日刊ひげうさぎ』について説明する。
    「ひげうさぎの新聞です。1学期のあいだ、きれいにそろえてとっておくと、こんなにすてきな本ができます。1枚ずつしかあげませんから、なくさないようにしてください」

  3.  朝のあいさつのしかたの指導。「おはよう!」と大げさに言いながら教室に入ってくるところをやってみせる。
     同じことを、手をあげた何人かの子にやってもらう。やってくれたのはほとんど女の子だった。

  4.  「ゆかいなまきば」を歌う。子どもたちがギターに見とれて(?)いたせいか、教師の声しかしなかった。

  5.  下校のしかたの指導。
    「外に出たら、名札の色と同じ色の旗を持っている先生のところにならびます。みんなと別れるところまできたら、その先生にさようならを言って、帰りなさい」

  6.  「先生方とのお別れの会」[=離任式]があったため、2回にわたり教室を30分ほど空ける。そのあいだ、「めいろ」のプリントをやるように1枚ずつ配ったが、ゴールできた子はほとんどいなかった。

4月7日(水)
  1.  出欠確認、健康観察の説明。
    「頭が痛い、おなかが痛い、のどが痛い」に手をあげた子がぜんぶで4人。

  2.  朝のあいさつのしかたの指導。
    「今日は、教室に入ってくるときにみんな『おはよう』が言えました。気持ちがいいですね」

  3.  提出物3種類を集める。すでに前日に提出した子が「持ってきてません」と不安そうな顔をしていた。

  4.  「おたよりノート」を持ってきた子が6人。下校までの数分間で全部に返事を書く。もともときたない字がさらに乱れた。

  5.  運動場たんけん。運動場を見たとたん、「うわー、ひろーい!」と歓声があがる。いくつかの遊具で遊ぶ。

  6.  プリント配布、3種類。全員に過不足なくすべてのプリントが行き渡り、連絡袋にしまったことを確認する。

  7.  下校の指導。前日とコースが変わった子が2人。

4月8日(木)
  1.  提出物を4種類集める。「おたよりノート」は1人。この日までの書類を持ってこなかった子が2人。

  2.  国語、生活、図工の教科書をたしかめる。「お願いします」とあいさつし、折り目をつけさせる。名前はみんな書いてあった。自分で書いた子もいて、ほめた。教科書を持ってこなかった子は2人。
     予定表(学年だより『あのね』)の見方を指導。

  3.  運動場たんけん。鳥小屋、中庭を経て、運動場へまわる。

  4.  プリント1枚配布。

  5.  下校の指導。教室を出るときに、一人ずつ名前を呼んで握手をする。3日目で全員の名前が覚えられた。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.003-1993-04-09


web『たまてばこ』 No.375 2003-05-20-Tue


最初の1週間・指導のポイント(前)

 前号には、入学後3日間のできごと(指導?)を書きならべました。雑多なことを脈絡なく指導しているようにも見えますが、どれをあつかうに際しても、これから述べる5つのポイントをいつでも念頭においていました。
 本号と次号では、そのポイントを書いてみます。


 1.「学校は楽しいところだ」と実感させること

 入学の日から1週間は、ほかの何もできなくてもこれだけが徹底できれば大成功だ、と思っていました。
 教室での勉強(教科の学習はまだですが)や友だち・担任とのかかわり、運動場での遊びなどをとおして、
「学校っておもしろくて楽しいところだ、またあしたも来たいな」
 と実感してもらえるように、さまざまな手だてを使い、気をつけてきました。

 また、駄じゃれ、ジェスチャー、おもしろい話などをふんだんにとりいれ、笑いのあふれる教室になるよう心がけてきました。

 笑いは知性の証拠です。知性に裏づけられた笑いで、教室の雰囲気をほぐし、子どもたちの心を開こうとしたわけです。
 これからは“笑う練習”などというものもとりいれる予定です。

 1年生になって1週間がすぎました。お子さんのおうちでの様子はいかがでしょう。
(何人かの方からいただいた連絡帳には、異口同音に「毎日楽しそうに帰ってきます」と書いてありました。うれしいかぎりです)


 2.「先生はすごい、頼りになる」と思ってもらうこと。

 これには二つの意味があります。

 第一に、担任の得意技をアピールし、「私の先生は〜ができてすごーい」と思ってもらえるようにしたことです。イラストを描いたり、ギターを弾いたり、高鉄棒でさかあがりをしたり、みんなの名前を3日で覚えたり...。

 ぼくにはできないことがいっぱいありますが(ピアノ関係まるでダメです)、まずはできることで子どもたちをひきつけ、好きになってもらえるように、と考えました。

 第二に、困ったときには先生が助けてくれる、何でも話すようにしようと思ってもらえるように配慮してきたことです(過保護にして甘やかすのとは違います)。
 ランドセルどうするの事件(No.001)や連絡帳まっしろけ事件(No.002)も、子どもたちが担任を頼りにしているからこそおきたことでしょう。

 ですから、入学後1週間にして、子どもたちは「学校で頼りになるのは担任の“ひげうさぎ先生”だけ」と思いこんでいるはずです。
「そんなことしたら、先生に言いつけるわよ」
 などとは、くれぐれもおっしゃらないように!


 3.メリハリのある生活リズムをつくること

 遊ぶときは遊ぶ、話を聞くときは聞く、席につくべきときは立ち歩かない...。これらのことはかなり徹底して指導してきました。

「〜時までは遊んできていいよ。チャイムが鳴ったら教室ね」
「みんなが席についたら、先生はお話を始めます。みんながそろうまで、少しだけ待っていてね」

 1年間を左右する、だいじな約束ごとです。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.004-1993-04-12


web『たまてばこ』 No.376 2003-05-21-Wed


最初の1週間・指導のポイント(後)

 4.学級生活のシステムを教え、確立する

 登校してから下校するまで、教室(学校)にはさまざまな“約束ごと”があります。

 ・昇降口で靴をどうするのか。
 ・教室に入ってきてランドセルをどうするのか。
 ・勉強道具をどうするのか。
 ・担任あての提出物をどうするのか。
 ・トイレに行きたいときにはどうするのか。
 ・他の教室や外へは、ならんで行くのかばらばらに行くのか。
 ・出欠の確認はだれがどのようにするのか。
 ・配布物はどうやって配り、どこへしまうのか。
 ・勉強のプリントはだれがどのように集めるのか、などなど。

 数えあげたらきりがありません。

 1年生は(もっと上の学年でも同じですが)これらのことをいちいち担任に聞きにきます。それも、一人ひとりが入れかわり立ちかわり聞きにきます。
 担任にしてみれば、同じことを何度も何度も、それこそ37回!も言わなくてはなりません。時間と体力と気力の浪費です。

 そこで、できるだけのことをシステム化し、いちどそのシステムが動き出せば1年間はめんどうなことにならないようにしたいと考えています。どうでもいいところは時間と労力を節約して効率よくすませ、大切なところにたっぷり時間をかけたいからです。

 もちろん、これらのことをいっぺんに教えているわけではありません。一つのことを指示し、全員ができたことを確認してから次へすすむようにしています。
 翌日になれば忘れている子もいるので、覚えていてできた子をほめることで、忘れた子に気づかせるようにします。

 はじめのうちはとても時間がかかりますが、このような指導を徹底してくりかえしていくうちに身につくようになり、1か月もすれば驚くほど早くできるようになります。
 「急がば回れ」のことわざどおりです。


 5.ことばによる指示を聞いて行動できるようにする

 これは難題です。

 たとえば、6日の帰りがけにこんな指示をしました。

「名札にぬってある色と同じ色の旗を持っている先生といっしょに帰ります。外に出たら、その旗の先生のところに集まりましょう」

 たったこれだけの、だれが聞いても間違えようのないことでも、間違える子どもがいます。赤の子と青の子が手をつないでいたり、とんでもないところに黄色の子がいたり、「ぼくはどこ?」と半ベソをかく子がいたり...。

 「聞いていない」「聞いてはいるが意味がわからない」「意味はわかったがふざけてできない」など、原因はいろいろ考えられます。

 教室での学習は大部分が「ことば」によってすすめられます。指示のことばを的確に聞きとってそのとおりに行動できるかどうかは、学習の習得にも直結するとても大切なことです。
 明確で単純な指示をして、それが全員に確実に伝わって行動できたかどうかをいつも気にするようにしています。

 ご家庭でも、これまで「あれ」「これ」ですませていたようなことがあるようでしたら、これからはできるだけ明確な「文」で会話をしてくださるようお願いします。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.005-1993-04-13


web『たまてばこ』 No.377 2003-05-22-Thu


「ひげうさぎ復活」の巻

 きのうは「日刊ひげうさぎ」が「休刊ひげうさぎ」になってしまいました。編集長がダウンしたためです。
 楽しみに読んでくださっている皆さん、ごめんなさい。
(これから、休刊したときは「あ、またカゼひいたな」とでも思ってください)


 お忙しいなか、13日の学年・学級懇談会にお集まりいただき、ありがとうございました。

 教室での学級懇談会の席で、今年度の「父母と教師の会(PTA)」のクラス選出委員が決まりました。皆さんそれぞれにさまざまなご事情をかかえておられるなか、3人の方がこころよく委員をお引き受けくださいました。
 1年間、どうぞよろしくお願いいたします。

 3人の方がPTAの委員として気持ちよく活動できるように、クラスの皆さんでもり立てていってください。

 また、終了まぎわのどさくさのなか、ベルマークの仕事をしてくださる方も2人決まりました。よろしくお願いいたします。


 きょう、交通安全教室がおこなわれました。

 交通安全協会の方が3人と、○○の信号のところを担当してくださる交通指導員(むかしのことばで「みどりのおばさん」)のSさん、ぜんぶで4人の方に、道路の安全な歩きかたを教わり、じっさいに学校のまわりを1周しながら指導していただきました。(←悪文だ。100字以上も句点がない)

 交通安全の指導はすべて4人の方におまかせしていたので、ぼくはちょっとした実験(体験)をしてみました。それは、しゃがんで子どもの目の高さになってみて、歩いたりおじさんの話を聞いたりあたりを見まわしたりしたことです。

 わずか1時間ほどのあいだでしたが、いろいろなことが見えてきました。いや、「1年生はいろいろなことが見えない」ということが実感できました。

 とくに、○○の歩道橋からの景色は“絶景”です。てすりに景色が たれてしまい、ほとんど見えません。小さい子どもが柵のすきまからのぞくように見ている気持ちがよくわかりました。

 あの歩道橋を渡るときに、
「よそ見しないでまっすぐ歩きなさい」
 と指導することがどれほどナンセンスなことか...。
 大きな声では言えない話でした。


「今日から、先生なしで、みんなだけで帰ります」
「ワーイ、やったー!」
「どうして? 先生のこと、きらいなの?」
「そうじゃなくて、先生といっしょだとまっすぐ帰らないといけないからね」
「お友だちといっしょなら、道草できるもん」

 なるほど、そういうことか。
 職員室で、2組のN先生も3組のT先生も同じことを話しておられました。

 たくましくしたたかな子どもたちは、おいしい道草を食いながら、おなかをすかせたころに無事に家に帰りついたことでしょう。


 「おたよりノート」をご覧ください。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.006-1993-04-15


web『たまてばこ』 No.378 2003-05-23-Fri


「おたよりノート」

 「おたよりノート」をご覧になっていただけたでしょうか。
 たどたどしい字で次のように書かれていたはずです。

 4 16 もく  わたしは         はんです。


 これは、集団下校でつかう地区の名前と班の番号を覚えてもらうために、「おたよりノート」を利用してみたものです。

「帰ったら、おうちの人に『おたよりノート』を見せて、『わたしのチクはなあに?』って聞いて、四角の中に書いてもらっておいで」
 と話しました。

「『チクワチクワ』って覚えて帰ればいいよ。でも『チクワ』って言っているうちに『おでん』になったらだめだよ」
 などと冗談を入れながら、「地区」と「班」を印象づけるようにしました。

「でもね、忘れてしまったらしかたがない。またあした教えてあげるから、安心して」
 とフォローもしておきました。

 さて、どこまでおうちの人に伝わったでしょうか。


 ところで、無謀といえばこれほど無謀なことはありません。なにせ、入学したての1年生に、教室でのひらがな指導をまだ一文字もしていない1年生に、いきなりひらがなを使って「文」を書かせたのですから。

 たしかに、これはふつうの1年生を指導する「常識」からはかけ離れた「非常識」なやり方です。しかし、「これでいける」というぼくなりの読みもありました。

 以下にそれをお話して、この方法にたいするご理解をえたいと思います。


 第一に、「37人全員が自分の名前をひらがなで書ける」という事実がありました。数の多い少ないはありますが、教室で教える以前に、どの子もあるていどのひらがなが書けるのです。

 つまり、子どもたちはなんらかの「ひらがな指導」をすでに受けており、「ひらがな一文字が一音をあらわす」こと、「ひらがなをつなげることでコトバ(文)を書いてあらわせる」ことを、経験的に知っていることになります。

 また、厳密に調べたわけではないのですが、「どの子も大部分のひらがなが読める」という手ごたえも感じていました。
 つまり、「すべての子にひらがな指導の素地ができている」ということになります。

 それならば、かりにまだ書けないひらがながあったとしても、黒板に書かれたものをゆっくりと時間をかけて書き写すことならばできるだろう、とふんだわけです(じっさいに20分かかりました)。

 第二に、「コトバは表現・伝達の手段である」というぼくの言語観があります。
 「あ」というひらがなはそれ一文字で意味をもつのでなく、「あひる」の「あ」であり「おかあさん」の「あ」なのです。「あ」が書けるようになることが究極の目標なのではなく、「あ」の入ったコトバが書けるようになる一歩であるわけです。

 それならば、ただやみくもに「あああああ」と練習するよりも、コトバ(文)の中で、それも表現・伝達する切実さ・必然性のあるコトバ(文)の中で「あ」を使う方が効果がある、と考えたわけです。

*上の文章で真意が伝わったか、自信がありません。いずれまた書きます。
(もちろん、「あ」の字その他のひらがなを正しく書けるようにする指導もおこないます。ご心配なく)

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.007-1993-04-16


web『たまてばこ』 No.379 2003-05-24-Sat


これが生活科の授業、かな

 黒板消しで黒板をすっかりきれいにし、心を整えて「さあ小学校最初の生活科をやるぞ!」と力んだとたん、
「あーあ、消えちゃったー。ひげうさぎ書いてー」
 の大合唱。

 ずっこけたけれど、そんなことで負けてはいられない。すかさず“ひげうさぎ”登場。吹きだしつきのイラストを描きました。
 子どもたちは板書する文字にあわせて、
「と・も・だ・ち・で・き・た・か・な」
 と読んでいきます。しめしめ、こっちのペースにはまったな。

「入学して1週間がたちました。小学校になってから初めてお友だちになった子がどのくらいいるかな。そのお友だちの名前を名札を見ないで言える人?」

 手をあげた子をさして、名前を言ってもらいました。
 6、7人の子を指名したところで、挑発的に言います。

「じゃあね、もっとたくさん、そうだな、この教室にいる37人全員の名前が言える人はいるかな?」
「えー、ムリだよー」
「そんなの言えるわけないよー」
「でもさあ、先生は37人みんな覚えたでしょう」
「ウッソだー」

 おやおや、この前、帰りがけに握手しながらみんなの名前を呼んであげたのに、もう忘れてしまったのかな。

「ウソじゃないよ。じゃあ、言ってみようか」
「うんうん、やってー」
「よし、みんな立ってごらん。先生が黒板の方をむいて名前を呼んでいくから、呼ばれた人はすわる。言い終わったときに立っている人が一人もいなければ、全部言えたことになるね」

 この提案に、ぼくはもちろん、子どもたちも緊張します。

「始めるぞ。・・たいが、・・ともひろ、・・かなこ、....・・けん、・・なつき、・・せいこ!」

 言い終わってふりむくと、みごとに全員着席しています。子どもたちが拍手してくれました。

 思わぬ寄り道。ここからがこの授業の本題です。
「ど・う・し・た・ら・お・ぼ・え・ら・れ・る・か」
 例によって、黒板に書くのにあわせて一文字ずつ全員で唱和してくれました。

「先生みたいに、37人全員のお友だちの名前を覚えるには、どうしたらいいかな?」

 質問の意味がわかった子から、だんだん手があがっていきます。

「これ(机にはってある名札)を見て覚える」
「(胸の赤い名札を裏返して)こうやって隠す」
「後ろから見て、言う」
「名前を言う」
「2人で名前を言う競争をする」
「みんなの名前をノートに書く」
(それぞれの発言に、もっといろいろなおもしろいやりとりがありましたが、割愛)

「いいのがたくさん出たね。先生もひとつ考えたんだ。大人の人が、とくにお父さんみたいな男の大人の人どうしが、初めて会ってあいさつするときにすることがあるんだけどな...」

 握手、おじぎ、あいさつ、と発言がありましたが、気がついてほしい肝心のものが出ません。

「わかった。めいしだ!」
「そうそう、名刺。このつぎの生活の時間に、自分の名刺をつくってお友だちと交換しましょう」

 というわけで、最初の生活科が終わりましたとさ。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.008-1993-04-17


web『たまてばこ』 No.380 2003-05-25-Sun


ことばのこばこ〜第1集

 『日刊ひげうさぎ』の創刊号を発行した翌日のこと。
 ある女の子が、
「先生先生、ちょっと耳貸して」
 とやってきました。

 腰をかがめて話を聞くと、
「先生のうち、ネコがいるんでしょ」
 と言います。

「そうだよ。きのうの『ひげうさぎ』を読んでくれたんだね」
 と答えると、にっこりしてくれました。

 それからしばらくして、また同じ子が、
「先生先生、ちょっと耳貸して」

 こんどは何だろうと思い、また腰をかがめました。
 すると、
「先生のうち、赤ちゃんも飼ってるんでしょ」

 「飼ってる」と聞いて、大きな声で笑ってしまいました。ネコと赤ちゃんをたずねる順をまちがえてしまったのでしょうか。わが家のいたずら娘は、たしかに「飼ってる」みたいなものですが...。

 名(迷)言の主はTさんでした。Tさんの家にも6月には赤ちゃんが誕生するそうです。


 「入学を祝う会(=入学式)」半日のプログラムがすべて終わり、ほっとしているところへ、1組の子どもたちの介添え役をしてくださったH先生がこんなことを話しにこられました。

「先生のクラスの一番うしろにすわっていたYくん、わたしの隣にすわっていたけど、すごいわよー」

 おやおや、いったい何がすごいのでしょう。

「校長先生のお話のあいだじゅう、理屈をならべてブツブツ言ってるの。『まさに』を8回も言った、なんて言っていたわ」
 これまた大笑い。たしかに校長先生は「まさに」を乱発します。

 1年生といえど侮り難し、ですね。ぼくも話し方に気をつけようっと。


 「おはようございます」の練習をした翌朝から、教室に入ってくる子どもたちは大きな声で元気なあいさつをしてくれるようになりました。

 さわやかな気持ちで「おはよう、おはよう」と応答しているときに、男の子が一人、黒板に書いてある「ひげうさぎ」の絵にむかって何か言っていました。

「おはよう、ひげうさぎ。おまえも何かしゃべれよー」

 Kくんでした。さすが1年生、カッワイイ。


 次もKくんの名(迷)言。
 担任が付き添わず、初めて子どもたちだけで帰った次の日。

「みんな、きのうは無事に帰れたかな。まっすぐおうちに帰ったか、それともどこかで道草でも食ったかな?」

 このことばに食ってかかったのがKくん。
「道草ってね、食ったりしないんだよー。寄り道することだよー」

 彼はこのシリーズの常連になってくれそうな予感がします。


 外へ遊びに行った子を呼んできてもらおうと、教室にいる子に声をかけました。

「そろそろ始めるから、運動場に行ってみんなを呼んできてー」

 「うん、わかった」という顔でかけだしてくれたMくん、
「運動場って、なかー? そとー?」

 1年生って、これだから好きです。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.009-1993-04-19


web『たまてばこ』 No.381 2003-05-26-Mon


話を聞いてくれ!

 初めて1年生が月曜日の朝会に参加しました。

 司会の先生に、
「1年生も、よくがんばって聞いていましたね」
 とほめられたので、教室に戻ってから次のような“テスト”をしてみました。

「校長先生のお話は、つぎの3つのうちどんなお話だったでしょう?
  1.けがをしないようにしましょう。
  2.気持ちのよいあいさつをしましょう。
  3.しっかりべんきょうをしましょう。
 さあて、どれでしょう。ちゃんと聞いていたかな」

 「1けが 2あいさつ 3べんきょう」のように板書したところ、手をあげるまでもなく、
「あいさつ! 2のあいさつ!」
 という声が大きくなりました。

「そうだね。よく聞いていたね」

 でも、ここでやめておかないのがぼくのしつこいところ。

「では○○くん、校長先生のお話は何番だったかな?」

 朝会で遊んでいた子をさりげなく指名しました。朝会のときに聞いていなくても、たったいまの教室でのやりとりを聞いていれば答えられると思ったからです。

「えーと、うーんと、3のべん...」
「えー、ちがうよー!」

 まわりのブーイングに、その子の声はかき消されてしまいました。

 ちゃんと話を聞いてくれ!


「では、今日の配達屋さんをしてもらいましょう。おうちの人から先生へ、お金の入った封筒や銀行のお手紙、『おたよりノート』が書いてあったら、持ってきてください」

 写真申し込みの最終日で3人、「おたよりノート」が1通、それに銀行の口座振替依頼書が12人分提出されました。

 [印もれで]依頼書を再提出した子をチェックしていくと、土曜日にわたしたうちの一人分が足りません。その子にむかって、

「□□くん、君も出すことになっているけど、ないのかい?」
「うん、ない」
「ほんとうに持ってきてないの?」
「うん」

 これですめばよかったのですが...。

 帰りのしたくをしているときに□□くんがやってきました。手には、朝「ない」と言っていた書類を持っています。

 ちゃんと話を聞いてくれ!


 「おたよりノート」も同様でした。

 3校時が終わってから「おたよりノート」を書かせました。書く場所を指定するために全員のノートの欄外に「・」のしるしをつけてまわっているときに、見つけてしまったのです。おうちの方から担任あての連絡が書かれているノートを。それも、2人も...。

 ちゃんと話を聞いてくれ!


 今日が初めてのまるまる3時間だったので、朝のうちに時間の説明をしました。

「今日から3時間ですね。帰るのは11時30分ごろ。お休み時間は時計の針がここまできてからだよ。『中休み』とか『20分休み』とか言って、1年生から6年生までみーんなお休み時間だから、たっぷり外で遊べます。それまではお勉強の時間」

 しばらくして、ひらがなの「あ」の字を勉強しているときに聞こえてきた◇◇くんの声。

「今日は外で遊べないのかなあ。お休み時間ないのー?」

 ちゃんと話を聞いてくれ!

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.010-1993-04-20


web『たまてばこ』 No.382 2003-05-27-Tue


集団下校

 1組の子どもたちについて、集団下校の地区・班名と集合教室を一覧表にしてあります。

[一覧表略]


 今週の土曜日に集団下校がおこなわれます。「集団下校・同伴下校」実施の詳細は各地区の校外委員さんから連絡があったと思うので、そちらにゆずります。

 問題は、当日、1年生の子どもたちが定められた集合教室にぶじにたどりつけるかどうか、にあります。

 事前にそれぞれの集合教室の場所を教えておきますし、担任が用意した組・名前・地区・班・集合教室を明記した名札を首からぶらさげて歩くので、万が一にも校舎内で迷子になることはない、と思います。

 と楽観視するのは浅はかで、毎年かならず何人かの1年生が行方不明になってしまいます。集合教室までの道順を忘れてしまう、というのはまだましなほう。「2−2」と「2の2」はちがう教室だと思いこんで迷子になる子がいたり、集団下校などどこ吹く風、名札をぶらさげたまま家に帰ってしまう猛者まで出現します。

 そのたびに「1年生がいない!」と学校中が大さわぎになり、担任はあちらこちらに頭をさげてまわる羽目になります。

 そんなさわぎをこれまでは大笑いしながら楽しんでいられたのですが、今年は笑われる立場に逆転です。
 さて、今年の1年生はどんな珍事件を引き起こしてくれますか。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.011-1993-04-21


web『たまてばこ』 No.383 2003-05-28-Wed


集合教室をさがせ!

「これから集合教室をさがしてきてもらいます。先生は教えません。みんなだけでさがしてきてください。
 それでもいいから行ってみたい人は?」

 さっと手をあげたのはOくんで、あとからつづいてぞろぞろと手があがりました。

「では、Oくんと同じ班の人?」

 UさんとKさんが手をあげました。

「最初にこの3人に行ってもらいましょう。あなたたち東1班の集合教室は、4の4、4年4組です」

 と言いおわらないうちに、3人は教室を飛び出して行きました。

 それを見送った子どもたちは、「ハイ、ハイ」とつぎつぎに手をあげていきます。自分も行きたい一心で、ぼくの話など耳に入らないようです。
 そのさわぎがなんとか静めて、とにかく先発隊が戻ってくるのを待つことにしました。

 ところが、その3人がなかなか姿をあらわしません。時間にすればわずか数分待っただけなのですが、4年4組へ行って戻ってくるだけにしては時間がかかりすぎます。

「どうしたんだろうねー。迷子になっちゃったのかなあ」
 と言うと、
「泣きながら学校中を旅しているんじゃないの」
 と、Iさんがうまいことを言いました。今週の『あのね』[1年生の学年だより]に書かれていた脅し文句そのままです。

 そうこうするうちに、3人が息を切らせてもどってきました。

「あったかい? 何階だった?」
「えーと、3階。そこの階段をのぼって、一番こっちの教室」

 Kさんがしっかりと答えてくれました。合格です。

 これでやり方がわかったので、あとはどんどん指名して、探検に出発させていきました。

 同じ班に2人以上いるところは有無を言わせずに送り出しましたが、一人で心細そうなところには“おたすけ”をつけました。

 在学中の兄姉をもつ子が20人以上もいるので、集合教室(の近辺)をだれかしらが知っていて、ぶじに見つけることができたようです。


 ところで、ちょっとした演出をしようと思い、最後まで残しておいたところがあります。

「では、最後の人です。T1班の人は?」

 Mくんがいくらか不安げに手をあげました。

「Mくんの集合教室は『ジドウカイギシツ』です。どこにあるか知っていますか?」

 Mくんは首をふり、ノーの意思表示。ほかの子も知らないようです。

「行きたい人はMくんといっしょにさがしてらっしゃーい」

 ドドドドドーッと音がして子どもたちが出て行き、教室に残った子は3人だけでした。

 しばらくしてまたドドドドドーッと音がして、出て行った子どもたちがもどってきました。口々に「なかったよー」と言っています。

「そうか、なかったか。じゃあ、ヒントをあげよう。『ジドウカイギシツ』には漢字でこういう札がかかっています」
 と言いながら「児童会...」と板書していくうちに、
「あー、それなら見たよ。そういう漢字の部屋があったよー」

 書き終わってふりむくと、もう子どもたちはいませんでした。

 音のするほうについていくと、階段をドドドドドーッ、渡り廊下をドドドドドーッ、もひとつ廊下をドドドドドーッ。まるで民族大移動です。

 こうして、みんなそれぞれの集合教室をさがしあてることができました。
(せっかく覚えた集合教室の場所、土曜日まで忘れずにいてほしいなあ...)

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.012-1993-04-23


web『たまてばこ』 No.384 2003-05-29-Thu


先生が休んだ

「きのう、先生がお休みした理由はなんだと思う?」
「かぜー!」

 子どもたちがいっせいに答えます。

「違うんだ。きのうはかぜじゃなくてね...」
「会社行った!」
 目の前にすわっているSさんの声です。

「そうかそうか、会社か。先生のおしごとは学校の先生だから、学校が会社みたいなものだな。そうじゃなくて...」
「ねつがあった!」
 こんどは一番うしろの席のKさんです。

「うーん、ねつもかぜのうちだからな。先生が休んだのは、かぜでも、会社でも、ねつでもなくてね...」
 と言い、ざっとつぎのような話をしました。


 “ひげうさぎ家”のカルテ。
長女KANA
 夜中にかなり泣く。朝になると、右目が腫れてふさがっている。白目の充血も認められる。ボクシングノックアウト状態、別名淡谷のり子状態。熱も高い。
[所見]かぜ及びかぜからくる結膜炎。2日後に再検。

妻“ひめ”
 階段を踏みはずし、転倒。左足首を痛める。湿布と包帯で2日間ようすを見るも、症状好転せず。現在、ギプス&松葉杖状態。
[所見]靭帯がぐちゃぐちゃかなあ。5日後に再検。

夫“ひげ”
 先週以来のかぜがぬけず、ゼンソク様のセキが続く。家でごろごろしており、デクノボー状態。
[所見]しっかりせい!

長男にゃむ
 現在、昼寝中。いたって元気。
[所見]猫の手を貸してやってほしい。

[総合所見]
 “ひげうさぎ家”は崩壊の危機に瀕している。通院にせよ通勤にせよ、家族の移動には“デクノボー”が必要。したがって1日の休暇を認める。


「階段から落ちて...」
 と人に説明すると、妻はかならずこう聞かれるそうです。

「たいへんねー。それで、KANAちゃんはだいじょうぶ?」

 たまたま抱いていないときのできごとだったので、転倒での怪我は子どもにはありませんでした。

「だれも私のこと心配してくれないの」
 とすねていました。


 朝、教室に入りながら、
「おはよう!」
 と声をかけました。

「おはよう!」
 と元気なあいさつが返ってきて、つぎにつづいたことばは、
「『ひげうさぎ』ないのー? 先生、きのうくれなかったから、今日『ひげうさぎ』ちょうだーい」
 でした。
 ぼくもすねてしまいました。


 というわけで、22日にとつぜんのお休みをいただきました。

 朝から3時間を音楽のH先生、5年のS先生、学年のN、T両先生にお世話になったそうです。こうしていろいろな先生にみていただくのも、たまにはいいかもしれません。
(もっとも、H先生の名前を覚えていたのは同姓のHさん一人、S先生の名前は一人も覚えていませんでした)

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.013-1993-04-24


web『たまてばこ』 No.385 2003-05-30-Fri


ひらがなあそびの授業〜あいうえお

 「ひらがな」の学習をはじめました。プリントを使って、1日に1字ずつ学習していきます。

 このプリントは「ことばあそび」になっています。おもしろくて楽しい詩(歌詞?)を唱えながら、リズムにのってひらがなを書く練習ができるようになっています。


  あのつくものは
  なんだろな
  ありです
  あめです
  あひるです  (以下略)


 本号には「あ」「い」「う」「え」「お」の5文字の詩を載せました。
 これから、一行5文字終わるごとにこのように詩を掲載していきます。詩を読んでいるうちに自然に手が動いてひらがなが書けてしまう、そんなおもしろさ楽しさをみなさんも味わってみてください。

 使ったプリントは教室のファイルに綴じこんであります。
「おうちで勉強したーい!」
 という子がいれば、『ひげうさぎ』掲載の詩を使って何かのノートにひらがなの練習をするとよいと思います。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.014-1993-04-26



 ひらがなの詩は伊東信夫『ひらがなあそびの授業』(太郎次郎社)から。
 超がつくほど有名な本で、過去2回1年生を担任したときはどちらもこの教材を利用してひらがなを指導した。

 ただ、この教材もに一つ難点がある。それは書体がゴシックであること。とめ・はね・はらいを教えるには不向きだった。

 なお、以降の連載では「ひらがなあそび」のシリーズほか数号分を割愛する。


web『たまてばこ』 No.386 2003-05-31-Sat


家庭訪問

 家庭訪問の日程を以下のように計画しました。

[一覧表省略]


 移動の便宜を考えて、同じ地区ごとにまとめて訪問できるようにしてみました。

 上の日程でどうしてもご都合がつかない場合には、30日までに連絡帳にてお知らせください。学校の予定があいていれば、別の日時に変更します。そうでなければ、今回はご自宅の場所をたしかめるだけで失礼させていただきます。

 同じ地区の中でなら、順番を変えられてもけっこうです。その場合にも、どのように変わったかを30日までにご連絡ください。

 なお、「〜3:00」は「2:45以後におうかがいし、3:00になったら失礼します」という意味です。

 ぼくの家庭訪問は毎年ほぼ時間どおりにすすみます。誤差は5分前後です(たまに例外もありますが...)。
 後半のご家庭に迷惑をかけないよう、今年もみなさんのご協力をお願いいたします。


 ということは、1家庭あたり約10分の訪問となります。
「それじゃあ、なにもお話できないわ」
 という声が聞こえてきそうですね。

 ぼくは、家庭訪問の目的を2つ考えています。
  1. ご自宅の確認 お子さんがどんな地域に住み、どんな道を登下校し、どんなところで遊んでいるのか、それがわかれば訪問の目的の大半は達せられます。

  2. 保護者の方との顔つなぎ 訪問を機会にお顔とお名前が一致すれば、学校や学区でお会いしたときに気軽に世間話ができるようになります。

 とくに時間の必要な場合には、また別に機会を設けます。
 短い時間で多くのご家庭を訪問しなければならないので、時候のあいさつはぬき、お話は玄関先にて失礼いたします。また、茶菓の接待はご無用に願います。


「それじゃあ、いったいなにを話せばいいの?」
 という声も聞こえてきそうですね。

 そこで、つぎの3つのことを教えてください。

 A.この1か月のようす(楽しそう・いやがっている、など)
 B.登下校の友だち、連絡帳を託す子
 C.帰宅後の遊び場、遊び友だち、習い事

 また、生育歴・家庭環境・健康状態などで担任が知っておいたほうがよいと思われることがあれば、それもお話ください。


 とカッコよく“原則”を宣言しましたが、あまりこだわりすぎず、自然体でおうかがいします。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.015-1993-04-27


web『たまてばこ』 No.387 2003-06-01-Sun


ことばのこばこ〜第2集

 『ひげうさぎ』を配るときには、いつもいちばん前の子に列の人数分だけ渡し、自分のを1枚取ってうしろにまわしていく、というやり方にしています。

 けれど、初めて『ひげうさぎ』を休刊した翌日は、ぼくが子どもたち一人ひとりの席をまわって1枚ずつ配ることにしました。

「今日の『ひげうさぎ』は、先生が1枚ずつ配ってまわります」

 こう言って配っていくと、だまって受けとる子もいれば、「ありがとう」とひとこと言ってから手を出す子もいます。
 そんな中でのKさんとの会話です。

「『ひげうさぎ』のきのうのぶんはないの? きのうのぶんもちょうだーい。2枚ちょうだーい!」
「きのうのぶんか。ないんだなー。今日は1枚だけ」
「あーあ、ざんねん...」

 たのしみに読んでくれているのがわかって、うれしいことばだなあ。こりゃ、かんたんには休刊できないぞ。


 何日か後にも、たまたま『ひげうさぎ』を一人ずつ配ってまわったことがありました。

 Kさんに1枚渡すと、こんどは、
「先生のぶんはあるの?」
 と聞かれました。一瞬、なんのことだかわからなかったのですが、
「あ、『ひげうさぎ』のことか。先生のぶんまで心配してくれて、ありがとう」


 やはり『ひげうさぎ』について、ご家庭で親子で読んでくださっているのがよくわかるエピソードを一つ。

 心ここにあらずという様子で、そっぽをむいてぼくの話を聞いてくれない子がいたので、
「○○くん、ちゃんと話を聞いてよー」
 と注意しました。

 すると、
「きのうのに書いてあったよー」
 とIさんの声がしました。前日に配った『ひげうさぎ』No.010「話を聞いてくれ!」を思い出しての発言です。

 Iさんのことばがさらにつづきます。
「それからね、お母さんが言ってたけど、『むりむり』って言ってるのは、先生が結婚した人だって」

 イラストまでも読みこんでくださっているのですね。


 「1年生を迎える会」で、児童会議長の6年生があいさつをしていました。

「1年生も、これからいろいろな行事をとおしてりっぱになっていくことでしょう...」

 このことばを聞いて、前にならんでいる子にむかって、
「みんな、りっぱになってね」
 と声をかけると、Mくんがぼくの顔をジロリと見あげてひとこと。

「もうりっぱじゃん」

 返すことばがありませんでした。


 毎朝「おなかが痛い人は?」などのように聞いて、健康観察をしています。

 まだこれを初めて間もないころのことでした。
「頭が痛い人はいますか?」
 手をあげたSさんにぐあいをたずねると、

「あのね、うちのお母さん、きのう頭が痛かったよ」

 なんと、家族の健康観察までしてしまいました。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.016-1993-04-28


web『たまてばこ』 No.388 2003-06-02-Mon


自 立

「だってお母さんが...」
 ということばを、短い期間に3回も聞きました。

 最初は、運動靴の左右を間違えてはいている男の子に、
「右と左が反対だよ」
 と声をかけたときでした。その子からは、
「お母さんが『反対にはいてもいい』って言ったもん」
 ということばが返ってきました。

 次は、削ってある鉛筆を1本しか持っていない女の子に、
「折れたら困るから、3本ぐらい削って持っておいで」
 と言ったとき、
「『1本ぜんぶ使ってから、つぎを削りなさい』ってお母さんが言った」
 という返事が戻ってきました。

 そして3回目は、赤白帽子を忘れた子に注意したときでした。
「なんだ、持ってこなかったのか...」
「だって、お母さんが入れてくれなかったんだもん」

 それぞれの場合について、お母さんの立場からはそれなりの事情説明なり弁明なりがあるとは思いますが、「子どもの自立」という点で考えるとどれも大きなハテナがつくできごとでした。


 最後の「忘れ物」に場面を絞って、思うところを書いてみます。

 上の子にかぎらず、「忘れ物」を親のせいにする子がけっこう目につきます。
「お母さんに頼んでおいたのに...」
「お母さんがどっかへやっちゃった...」
「お母さんが見てくれなかった...」
 などなど、「忘れ物」をしたときの決り文句です。

 このようないいわけが出てきたときに、ぼくは、
「お母さんが悪いのではない。あなたが悪いのだ。頼んでおいたとしても、もらって学校に持ってくるのはあなたの責任だ」
 というようなことを言います。
 1年生にたいしても、子どもが学校に慣れてきたころにはこういう厳しい言い方をします。


 さて、ご家庭では、いつ、どのような方法で「あしたのしたく」をさせているでしょうか。

  ・親がそろえてやる。
  ・子どもが一人でそろえる。
  ・親子いっしょにそろえる。
  ・子どもがそろえたものを親がたしかめる。
  ・その他

 プリント類や「おたよりノート」は、いつ、どのような方法で提出させているのでしょうか。

  ・親がランドセルから出して読む。
  ・決まった場所に子どもが出す。
  ・時間を決めて、いっしょに読む。
  ・ほとんど読まない。
  ・その他

 「こういう方法がいいから、こうしてください」とはぼくは言いません。「子どもが自立していくのにもっともふさわしい方法をよく考えてください」と抽象的に言うだけです。

 「学習の用意が一人でできる」「忘れ物をしない」などは、子どもがこれから9年間(あるいはそれ以上)の学校生活を送っていくうえで基礎中の基礎ともいえる大切なことです。

 それができるようになるかどうかは、1年生のこの時期にどのようにしつけられたかにかかっています。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.017-1993-04-30


web『たまてばこ』 No.389 2003-06-03-Tue


ああ、給食

 1年の担任は、4月のあいだ、子どもたちを帰したあと、職員室でのんびりと給食を食べています。そんな3人を、他の学年の先生方はニヤニヤ見ながらとおりすぎていきます。そして、異口同音に、
「もうすぐだねー」
 と、哀れみ半分からかい半分の気持ちで声をかけてくれます。
「そうやってのんびり食べていられるのもあとわずか。1年生の給食が始まったらたいへんだ。どんな顔になるか、みものだね」
 という意味です。

 毎日毎日そう言われつづけてきたので、4月30日がくるのがこわかった!
(学年だよりの『あのね』に「この日だけは迎えたくなかった」と書いたのは、なにを隠そうぼくなのです)


 そして運命の金曜日、3校時がやってきました。

 栄養士のM先生から給食についてのお話を聞き、いざ出陣。
 子どもたちは白衣・白帽・マスクを身につけ、手を30秒洗ってから、むかいあわせになった席につきました。

 全員がそろったところで、おもむろにこう板書しました。


 れ す と ら ん


「この教室は、給食のとき、レストランと同じです。
 レストランで大声で騒いでいる人を見たことがありますか。
 ドタバタ走りまわっている人がいますか。
 食べ物を投げたり粗末にしたりしている人がいますか。
 そんなことをしたら『マナーが悪い』と言われて、レストランからつまみ出されてしまいますね。
 給食もそれと同じです。お上品に食べられず、マナーが悪ければ、教室からつまみ出してしまいますよ。
 お友だち仲よくおしゃべりしながら、楽しく食べましょう!」

 この話を子どもたちは神妙に聞いてい(るように見え)ました。
(初めが肝心ですが、すこしおどかしすぎてしまったかしら)


 ワゴンを持ってきたり配膳台をふいたりするのは、今日はぼくがやりました。時間もかぎられているので、大切なところにポイントを絞って、順々に教えていこうと考えたからです。

 パン・牛乳・夏みかんを配るのを、Aくん、Bくん、Cさんに手伝ってもらいました。配膳にかかった時間はおよそ5分。これはなかなか幸先のよいスタートです。

 無事に配膳が終わり、みんなそろって、
「いただきまーす」

 最もおそれていた時間が始まりました...と思ったのですが、1組の子どもたちは比較的お行儀がよく、これだけ食べるのに30分もかかってしまった以外には、たいした問題もおきずに食べ終わることができました。
(お行儀がいいのは初日だけ、なんてことのないように祈っています)

 パンはひとかけらも残さず食べることができ、牛乳は2人が半分くらい残しただけでした。
 もっとも、夏みかんは、皮をむいて食べる子、そのままかぶりつく子、どちらもできずにぺろぺろなめている子と各人さまざま。ご家庭での食事のようすがちらりと見えてきたりして...。

 「ごちそうさま」をしたときには、もうとっくに12時をすぎていました。なにごともなかったけれど、くたびれたー。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.018-1993-05-01


web『たまてばこ』 No.390 2003-06-04-Wed


ほのぼの1年生 Part.2

 学年だより『あのね』を配り、翌週の持ち物を説明しました。

「6日の木曜日をさがしてごらん。それをずーっと読んでいくと、こくご、さんすう、たいいく、こくご、だね。
 その右に、ねこちゃんがおしゃべりしてるでしょ。大切な持ち物のことが書いてあります。いちばん上には...」
「うわばきー」
 元気な声が戻ってきました。よしよし、その調子。

「そう。今日、うわばきを持って帰ってよく洗ったら、また木曜日に持ってきます。よく目立って忘れないように、『うわばき』という字に赤えんぴつで線をひいておきましょう」

 このくらいのことはできるだろうと思ったのですが、念のために子どもたちの『あのね』を見てまわりました。
 すると、いたのです、突拍子もないことをしていた子が。
 どんなことか予想がつきますか。

<「うわばき」に赤えんぴつで線をひきましょう>
 と聞いたその子は、ぼくのことばをそのまますなおに受けとって、つぎのように「線をひいて」いたのです。

  うわばき

 でも、よく考えてみると、「線をひいて」という指示はアンダーラインよりも上のようにするほうが正しいような気がしてきました。

 1年生へのことばって、むずかしいなあ。


 ことばのむずかしさといえば、こんなこともありました。

 体育のある日には、朝、出欠を確認して健康観察をしたあと、
「ぐあいが悪くて○時間目の体育を見学する人はいますか」
 とたずねるようにしています。

 すると、健康観察のときに「頭が痛い、おなかが痛い」などと手をあげた子のなかで、ときどき「見学します」と言う子がいます。
(連絡帳でも連絡をいただくことがあります。連絡帳と自己申告と両方してくださるのがベストです)

 ある日、いつものように「見学する人は?」と聞くと、健康観察では手をあげなかった子が手をあげていました。

「○○くん、どうしたの。体育をやらないの? どこかぐあいでも悪いの?」
 たたみかけるようにたずねると、
「どこも悪くない。体育はやりたい」
 という返事。
「じゃあ、どうして手をあげたの?」
「『見学』ってどういう意味かわからなかったから...」

 「見学」を何ということばに言い換えたらよいか、はたと困ってしまいました。


 音楽の時間に、よくテレビで「ワン・ツー・ドン」を見ます。

 歌のお姉さんが画面の中から、
「こんにちはー」
 と呼びかけてくると、教室の1年生もとてもすてきないい声で、
「こんにちはー」
 と画面にむかって答えます。
 こういうときの子どもたちの目、きらきらと輝いているのです。

 ところが、学年がすすむにつれて目の輝きが失せ、いつのまにか、
「こんにちはー」
「...シラー...」
 となってしまいます。

 そうなると、この「ほのぼの1年生」シリーズもネタ切れで連載中止です。連載が長くつづくよう、いまのすなおな感性をいつまでも保っていけますように。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.021-1993-05-07


web『たまてばこ』 No.391 2003-06-05-Thu


おたよりノート・ひげうさぎ版

《ご使用の前にかならずお読みください。また、大切に保存してください。》


 新製品「おたよりノートひげうさぎ版」は、愛知教育大学教授の有田和正先生が開発された「おたよりノート」に、ひげうさぎ秘伝の生薬「げひびょち」を配合した新タイプの連絡帳です。
 副作用の心配がないので長期連用が可能なうえ、続ければ続けるほど効果がじわじわとあらわれ長く持続する、画期的な新薬です。

 効能・効果


学習の基礎力、学習のしつけの習得向上

親子のコミュニケーションの増進

ユーモアのセンスの練磨


 用法・用量

 ご家庭で1日1回数分〜十数分程度、1年間続けて服用する。

 特長
  1. 自分の書いた文字(文章)が他人に読まれてコミュニケーションが成立するという、「書くことの楽しさ」が味わえます。

  2. とかく叱責ばかりになりがちな親子関係にみずみずしいうるおいを与え、親子の会話の糸口にもなります。

  3. 『日刊ひげうさぎ』に続く“第二学級通信”として、教室とご家庭をつなぐパイプの役目を果たします。

  4. 毎日かならず「おたよりノート」を出し入れさせることで、手を抜きがちになる「あしたのしたく」を忘れずにさせるきっかけになります。

  5. どんなときでも1日1回は鉛筆を持ち、文字(文章)を書く習慣が身につきます。

  6. どんなときでも1日1回は鉛筆を持ち、文字(文章)を書く習慣が身につきます。

  7. さまざまな“ことば”に触れることで“ことばの世界”がどんどん広がっていきます。

  8. おもしろい文体に接し、自分でも使えるようになります。

  9. ユーモアのセンスがみがかれ、知的な笑いに敏感に反応するようになります。

  10. 身のまわりをおもしろく見る“目”が養われ、目のつけどころが鍛えられます。

  11. 教室を飛び出した発展的な活動のきっかけになります。

 使用上の注意
  1. 副作用の心配はまったくありませんので、1年間欠かさず毎日服用を続けてください(学校休業日は除く)。

  2. お子様だけの服用では効果が半減することもあります。ご家族みなさんでの服用をお勧めします。

  3. おたがいに声を出して読みあうと、おもしろさも格別です。

  4. 帰宅後、食前、入浴後、就寝前など、時間帯を決めて服用されると、服用の習慣が身につき、長続きします。

  5. 「なにこれ、読めないわ」「違ってるじゃないの」などは禁句です。どうしても我慢のできないときは、優しいことばで教えてあげてください。

  6. テレビ・ファミコンとは同時に服用しないでください。

  7. ときにはご家族の方が「おたよりノート」に記入されると、担任とのコミュニケーションも深まっていきます。

  8. 使用期限の切れたノートも、1年生の記念に大切に保存しておいてください。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.022-1993-05-10


web『たまてばこ』 No.392 2003-06-06-Fri


「おたよりノート」あれこれ

 薬の効能書きに見立てた前号の記事、技巧に走りすぎ、わかりにくいことがあったかもしれませんが、いろいろご不明の点も、やっていくにつれて「ああ、こういうことか」と納得していただけると思います。

 本号では、「おたよりノート」にかかわる細かいことのうち、お知らせしておいたほうがよいことをいくつか書いておきます。


 まず「おたよりノート」の書かせ方について。

 ぼくが板書したものをそっくりそのまま写す、というのが基本です。これを「視写」といいます。
(それにたいして、ぼくが話した文を耳で聞いてそのとおりに書き写すことを「聴写」といいます。どちらも学習の基礎力としてとても大切なものです。2〜3学期になったら「おたよりノート」は聴写で書かせる予定です)

 始めてからもう3週間ちかくたちます。だいぶ慣れてきたので、ノートを用意し全員がもれなく書いたのを確認しスタンプを押し終わるまで、15分程度になりました。


 習っていなくて書けない字、あるいは習ったけれど忘れてしまって書けない字がある場合には、そこに「○」を書いて抜かしておくようになっています。

 その「○」には、あとでぼくが書いてあげたり、近くの子に書いてもらったりしています(“ゴーストライター”です)


 スタンプを押しながらノートを見まわっていると、間違った字を書いている子がときどきいます。1〜2字抜けていてる子もいます。ときには1行そっくり落として平気な猛者もいます。いわゆる“誤字脱字”というやつです。

 そういうときにはその場で正しく直してあげたり、「ここがこう違っているよ」とことばをかけたり、そのままほうっておいたりと、時と場合によっていろいろです。

 今のところは正しく書くことが第一の目的ではないので、あまりしつこく直させるようにはしていません。
 読みにくい字でも、間違っていても、なんとか文意を読みとってください(けっして怒らないようにお願いします)。


 文末に押してあるスタンプは「書いたものを担任が見ましたよ」というしるしです。「正しくかけています」という意味ではありません(ほとんど正しく書けていますが...)。

 スタンプは4色20種類ほどあります。その日の気分によっていろいろ使っています。
 スタンプの種類による優劣(あるものが「優」であるものが「不可」など)はありません。ある日のスタンプはみな同じです。


 「おたよりノート」を持ってこなかった場合には、自由帳など別の紙に書かせています。あとでそれを切り取って「おたよりノート」にのりづけしている子が何人かいました。なかなかよい方法だと思います。
(もちろん、忘れないのが一番いいのですが)


 サイン、印などをしてくださる方、かんたんなコメントを書いてくださる方もいらっしゃいます。読んでいただいているのがわかり、ありがたいです。

 かならず、とは言いませんが、「配達ごくろうさま」と言いながら毎日サイン(印)してくださると、子どものはげみになると思います。また、たしかに読んでいただいたという確認にもなります。
(なおご不明の点があれば、お知らせください)

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.023-1993-05-11


web『たまてばこ』 No.393 2003-06-07-Sat


笑いのある教室

 月曜日の朝は、いつもならば運動場で朝会がおこなわれますが、今週はあいにくの雨でした。そこで朝会がどうなるか、説明をしました。

「今朝は雨が降っているので、運動場で朝会はできませんね。やってもいいのだけど、シャンプーを持っていないから頭が洗えない...」

 髪を洗うしぐさをして見せると、ワッと教室に笑い声があふれました。
 連休明けにもかかわらず、調子は上々。脳みそはぼけていないようです。


 朝会は「放送朝会」になり、栽培委員会の6年生が「緑の羽根の募金」の話をしてくれました。

 放送だけでは1年生にはわかりにくいと思い、終わってから募金の説明をしてあげました。

「...というわけで、募金に協力しようという気持ちがある人は、おこづかいの中から10円でも、20円でも、100円でも、1000円でも、1万円でも、100万円でもいいから...」

 ここでまた教室が笑い声でつつまれます。

 すなおに笑えるのは心が開放(解放)されている証拠です。ちゃんと話を聞いて理解できている証拠でもあります。
 「知的な子ほどよく笑う」ですね。


 つづいて、朝の定番メニュー「出欠調べ&健康観察」にうつります。

 お休みの子の連絡帳を開いてみると、内容がとってもおもしろい! 思わずゲラゲラ笑ってしまいました。

「なんて書いてあったの? 読んでー」
 と子どもたちにせがまれたので、一部を読んであげました。

「お休みの理由が書いてあるんだ。じゃあ読むよ。
  連休中に脳みそが腐ってしまった
  わけではないと思うのですが...。
  お熱があるのでお休みします
 だって」

 「腐ってしまった」でまたまた大笑い。子どもたちの知性にも、お母さんのユーモアにも、脱帽。
(ちなみに、「脳みそが腐って」は7日の「おたよりノート」の「のうみそがぼけないように」をふまえてのこと)


 健康観察は保健カードの項目の順に「気持ちが悪い人?」「頭が痛い人?」「おなかが痛い人?」...とたずね、手をあげさせて調べます。

「では、健康観察。連休中に脳みそがぐちゃぐちゃになった人?」

 ここまではついてこられないだろうと思いながら見まわすと、一人だけ、Kさんが手をあげていました。

「ほう、腐ったか」
「うん。もうこんなになっちゃった」

 両手で頭をぐちゃぐちゃしてくれました。ノリがいい!

「そうかそうか、楽しいねー。じゃあ、こんどはまじめにいこう。
 気持ちが悪い人?...いないね。
 頭が痛い人?...ハイ、2人。
 次は、おなかがー
 すいた人?」

 「おなかが痛い」で手をあげようと用意していた子が2人、もののみごとにひっかかって手をあげてしまいました。
 それを見て、またまたまたまた(ぐらいかな)大笑い。

 1組の教室は、朝から帰りまで毎日がこんな調子で、知的な笑いにあふれています。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.025-1993-05-13


web『たまてばこ』 No.394 2003-06-08-Sun


校長先生は食いしんぼう?

 校長先生に握手していただき、「あくしゅノート」にサインをもらってきた子がたくさんいます。教室に戻ってきた子どもたちにようすを聞くと、校長室に入っていき、ならんで順番にサインをもらったそうです。
「○○さんへ  校長先生」
 と書いたノートを何人もが自慢げに見せてくれました。

 最初の方の子にはていねいに日付や時間まで記してありましたが、あとからあとからアリンコの行列が増えてたいへんになったのでしょうか、だんだんかんたんになって、上のように書いてくださったようです。
 漢字で書いてあるので読み方がわからない、そこで「こうちょうせんせい」とふりがなをふってもらった子もいました。


 そんな話をしていると、あとから戻ってきた子が、
「ぼくの前でサインが終わっちゃった」
「もう少しだったんだけどな」
「校長先生、給食を食べ始めちゃったんだよ」
 などとぶつぶつ言っています。

 これはおもしろい。校長先生は1年生にサインするのをやめて、11時20分ごろに給食を食べ始めたのです。

 子どもたちがそろったところで、上のネタをもとに“授業”をしてみました。はじめての授業らしい授業です。


「校長先生は11時20分ごろに給食を食べ始めたんだって。みんなが食べるのは12時すぎ、20分ごろになるでしょう。なんでこんなに1時間も早く食べるのかねー?」

 どんな反応が戻ってくるかたのしみだったのですが、子どもたちの食いつきはあまりよくありませんでした。全体にボーッとした感じです。

「味見をしているんだよ」
 Tさんがポツンと言いました。この発言をきっかけに、みんなが授業にのってきました。

「そうか、味見してるのかー。でも、ちがうよ。きっとおなかがすいただけだよ。校長先生は食いしんぼうなんだよ」
 と、「味見してる」に納得しかけた子どもたちの考えをゆさぶってみました。

「そんなことはない!」
 案の定、みんなに反対されました。

「ぼくは食いしんぼうだと思うんだけど、一人も賛成してくれないんだな。じゃあ、食いしんぼうでないとすれば、校長先生が給食を早く食べるのはお仕事なんだろう。だって、1年生と握手するのをおしまいにして、給食にしちゃったんだから」
 と、さらにゆさぶってみました。

 まさか、給食を食べるのが仕事なんて...子どもたちは混乱してきたようです。

「お仕事じゃなくてね、お仕事がいっぱいあって忙しいから、早く食べたんじゃない?」
 Kさんの発言です。おもしろい考え方をするものです。

「3つも考えが出たよ。いったいどれだろうね。
  ・お仕事だから給食を早く食べた。
  ・お仕事がいっぱいで忙しいから早く食べた。
  ・食いしんぼうでおなかがすいていたから早く食べた。
 あしたも校長先生が早く食べるかどうか、わかるといいね」

「うん、こんど会ったら聞いてみる」
 気軽にそう言ってくれた女の子がいました。どんな「答え」を聞いてきてくれるでしょうか。たのしみです。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.029-1993-05-19


web『たまてばこ』 No.395 2003-06-09-Mon


教室のシステムをつくる

 今日したこと。

  1.机、椅子の大きさの身長順にする調節
  2.4人ずつ9グループの編成
  3.席替え
  4.グループごとの仕事のわりあて

 ワープロならものの数十秒で書けてしまうことも、授業時間にして2時間と半分もかかってしまいました。

 なにせ、
「聞かない・聞けない・聞こうとしない、もひとつおまけに聞いてもわからない」
 という「カ行4段活用」のような1年生相手なので、それはそれはもうたーいへんだったのです。1週間分ぐらいの体力と気力を消耗した感じがします。
(もっとも、多くの子は「聞いて・理解して・指示のとおり行動できる」ようになっています。4月のはじめとくらべたら雲泥の差です)


 1の机・椅子の大きさの調節は、小さい子は小さい机・椅子に、大きい子は大きい机・椅子になるように、教室の中でとりかえっこをしたものです。もっと早い時期にしておかなければいけないことでしたが、いろいろ事情が重なって...。

 つぎは9月の計測の結果をみて、若干の調節をする予定です。


 つぎに、給食の仕事が全員1回ずつ終わったので、あらためてグループを編成し、教室の仕事や生活がスムーズにいくようなシステムづくりをしました。それが2と4です。

 低学年の子が活動するのにちょうどよいと思われる4人のグループを9つ(1グループだけ5人)つくりました。各グループ男女2人ずつです。
 代表1人ずつのジャンケンによって、「1班」から「9班」までの班名を決めました。

 今回の編成では、各グループの平均身長がだいたい同じになるように考えたうえで、“教育的配慮”というスパイスをちょっぴりふりかけてあります。

 よほどのことがないかぎり、来週から9週間、4で述べる教室の仕事が一巡するまでこのグループでの生活がつづきます。

 自分が何班か、だれといっしょかは、すでに聞いておられると思いますが、念のために木曜日の「おたよりノート」に書かせておきます。新しい友だちができるきっかけになるでしょう。

 次回の編成は9月中ごろ、こんどはくじびきで決めるつもりです。


 3の席替えの話は割愛。

 最後に、いまの時点で教室に必要と思われる仕事を9つ選び、各グループが輪番で担当するようにしました。

  にっちょく   あつめ   せいとん
  きゅうしょく  くばり   あさじしゅう
  はいぜん    ファイル  なんでもや

 1週間とおしてひとつの仕事をし、翌週には別の仕事に移ります。9週間で仕事が一巡するので、グループ編成も9週間ごとというわけです。

 それぞれどんな内容の仕事をするのかという説明も省略。

 いちばん人気のある「きゅうしょく」について、白衣のことだけお知らせします。
 白衣を着るのは当番の子どもだけにします(ほかの子も着たければ着てもいいのですが)。『あのね』[学年だよりの予定表]の月曜の欄に「白衣 ○ はん」と書くので、その班の子だけお持たせください。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.030-1993-05-20


web『たまてばこ』 No.396 2003-06-10-Tue


愚痴とお願いの日々

 このごろちょっと気になること。

・前日に配布したプリントが「おたよりノート」に入ったままになっている子がいる。
・鉛筆を削ってきていない子がいる。
・ハンカチ1枚すら持ってこない子がいる。
・「おたよりノート」「あくしゅノート」「歌のいずみ」など、学習に必要なものを持ってこない子がいる。

 どれも“非常事態宣言”を発令するほどひどい状態にはなっていませんが、入学から連休前までと連休が明けてからとでは、あきらかにようすが違ってきています。

 見のがしたままにしてくとだんだんくずれが大きくなってきて、そのうちに取り返しがつかなくなるほどひどくなる、その最初の一穴のような着がします。
(考えすぎならいいのですが)


 教師くさい見立て。

 入学して1か月以上たち、それまで手取り足取りめんどうをみていたおうちの方(とくにお母さん)の手が、お子さんから離れつつあるのではないでしょうか。
 自分でできるようになったから手を離す、というのならいいのですが、そうではないとしたら...。

 この1か月ばかりのご家庭でのご指導が、「子どもが自分ひとりでできるようになる」ことにつながっていたかどうか、ちょっぴりふりかえってみてください。


 愚痴とお願いばかり書いていると学級通信は読まれなくなるものです。それはじゅうぶん承知のうえで、まとめていくつかのことを書いておきます。

 体育のある日には、運動のしやすい靴を履かせるようにしてください。あまりにおしゃれな靴なので、とても走りづらそうにしている子を見かけます。
 足にぴったりと合った、走りまわっても跳びはねてもよじ登っても大丈夫な靴をご用意ください。

 とびなわの長さの調節をお願いします。
 足で踏んで持ったときに、持ち手が脇(〜肩)ぐらいになるのがちょうどよい長さです。

 つぎは、こんなことまで書いていいのかしらというお願い。

 廊下のフックにかけてあるとびなわが、まん中をひょいとひっかけただけでダラーンとのびたままになっている子がいます。つまり、とびなわが結べないのです。
 「足切り」というなわ遊びをするのに、足に巻いたとびなわを結べない子もかなりいます。
 とびなわにかぎらず、「ひもを結ぶ」ことができるようにご指導をお願いします。

 さらにさらに、雑巾のふき方・洗い方・絞り方も教えてください。
 四角いテーブルを丸くふき、蛇口から流れる水にかざすだけでろくに洗いもせず、わしづかみにしてポタポタとしずくのしたたる雑巾をぶらさげてくる、なんてことのないように。

 これまで見た何人かのなかで、雑巾を絞る手つきがなかなかさまになっていた子もいます。NさんとUさんです。

「じょうずだね」
「だって、おうちでやってるもん」

 どちらも同じ答えが返ってきました。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.031-1993-05-21


web『たまてばこ』 No.397 2003-06-11-Wed


続・愚痴とお願いの日々

 前号を読んでくださった学年の先生方が、
「まったくそうだよねー。うちのクラスでもこのままそっくり印刷して配りたいくらい」
 と大きくうなずいて同意してくださったのに励まされ、読者の迷惑憤慨もかえりみず、「愚痴とお願いの日々」の続編をお送りします。
(つまり、この2号にわたって書くことは1組だけに見られる特殊な状態なのではなく、1年生全体に共通している現象なのです)


 まずは「落し物」から。

「持ち物にはすべて名前をつけてください」

 入学の当日からお願いしつづけていることが、なかなかわかっていただけません。
 教科書、ノート、鉛筆、消しゴムなどの学習用具はもちろん、マスク、靴下、下着、ハンカチ、カチューシャ、傘、レインコートのフード...およそ学校に持ってくるものは、からだ以外のすべてのものに、かならず名前をつけていただきたいのです。

「え、そんなものまで名前を書くの!」
 と思われるでしょうが、
「え、そんなものまで落ちているの!」
 というほど、1年生は落し物の名人なのです。

 そればかりでなく、
「え、どうしてこんな大切なものの持ち主がわからないの!」
 というほど、1年生は落し物が自分のものであるかどうかの見分けがつかないのです。

 先日は、片方だけ落ちていた靴下(もちろん名なし)の持ち主がなかなか見つからず、靴下をはいていない子全員に、ぬいでしまってあるはずの靴下を手にとって見えるようにさせて、はじめて持ち主がわかった、ということがありました。

 別のクラスでは、やはり落ちていたシャツ(当然これも名なし)の持ち主が、3日たってもいまだに見つからないそうです。
(もしかすると、1組から出張していったシャツかもしれませんよ)

 落し物があると、
「これ、だれの?」
「...」
「ちゃんとあるか、たしかめてごらん」
「...」
「もういちど、自分のがあるかどうか、手にとってたしかめて!」
「...」
 このくりかえしです。

 持ち主さがしで時間がムダになるだけでなく、教師も子どもも精神状態が悪くなるばかりで、授業に集中してとりくむことなどとうていできません。
 どうか、持ち物に名前をつけてください。


 ついつい力んで書いてしまい「落し物」だけで本号が終わってしまいそうなので、言い残したことを箇条書きにしておき、あとは懇談会のおりにお話することにします。

・箸の持ち方、食器の扱い方を教えてください。しゃもじやおたまで盛りつけをする経験もさせてくださると助かります。

・紙をぴったりと二つ折、四つ折にする練習をさせてください。

・ことばを文として最後まで明確に言うようにさせてください。「とれちゃったー」。だからどうしてほしいのか、など。

・手や指をつかう仕事をどんどんさせてください。

・曲にあわせてのリズム打ちあそび(「せっせっせ」など)をたくさん経験させてください。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.032-1993-05-24


web『たまてばこ』 No.398 2003-06-12-Thu


ことばのこばこ〜第3集

 給食の時間になると、5、6年生の放送委員会の子どもたちが担当している「お昼の放送」(校内放送)が教室のスピーカーから流れてきます。そのなかでとくに人気があるのがクイズです。
「これから、クイズをお送りします」
 という独特のイントネーションの声が聞こえると、教室が静かになり、1年生なりに知恵をしぼって答えを考えています。

 今回は、お昼のクイズにかかわる迷答・珍答・名言集です。


「しょっちゅう怒ってばかりいる文房具はなあに?」
「わかったー。お母さん!」

 声の主はIさん。
 これを聞いて、つられたように、
「うちもだよー」
「うんうん、お母さんね、怒ってばっかり」
 という迷答がつづきます。
 「文房具」などなんのその。1年生そのもの、でしょう。

 ところで、放送では、
「正解は、ふでばこ」
 と言っていました。なぜなのか、いまだにわかりません。


「いつも人に命令してばかりいる色はなあに?」

 おわかりになりますか? ぼくははっとひらめいて、ついつい
「しろー!」
 と叫んでしまいました。
 それを聞いたKさん、
「先生がまちがえるわけないから、しろー!」

 そして放送から、
「正解は...白」
 と聞こえるや、
「ヤッター!」
 ですって。いやはや、現金なものです。


 そうかと思えば、
「つぎのうち、じっさいにある国はどれでしょう?
  一番 セイロン
  二番 ブータン...」
 という問題を聞いて、ボソッとした声で、
「そんなの、1年生にわかるわけないじゃん」
 とつぶやく子もいます。
 ニヒルというか、悟りきっているというか。ね、Sくん。


 最後のクイズはこれ。

「日本では、車やオートバイはなんで左側を走るのでしょう?」

 クイズの“ひっかけ”に気がつかないので、子どもたちは首をひねってまじめに考えています。
「じゃまだから」
 という声が出ましたが、もちろん正解ではありません。

 ぼくはわかっていたので、がまんがしきれなくなり、
「へ、へ、へ...タ・イ・ヤ」
 すぐにスピーカーからも正解が流れてきました。
「答え、タイヤで走る」

 すると、Sさんが心の底から感心したというように、
「すごーい。なんでわかったのー?」
 と感嘆の声。
 それを聞いたTさんが、
「わかった。先生はいつもオートバイに乗ってるからだよ」
 と、わかったようなわからないような解説をしてくれました。けれど、これで納得してしまう1年生なのでした。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.036-1993-05-29


web『たまてばこ』 No.399 2003-06-16-Mon


あくしゅノート

 クラス友だちどうしの名刺交換と握手&サイン会から始まった生活科の「あくしゅをしよう」の学習は、他のクラス、他の学年の友だちへと相手が広がってゆき、さらには学校の職員にまで握手&サインの相手を求めるようになりました。

 その間、校長先生が早い時間に給食を食べるわけをNさんが聞いてきてくれたり、Kさん・Hさん・Yさんが休み時間に「あくしゅノート」を持って職員室をうろうろしはじめたり、教頭先生に「サインして」とノートを突き出したせいで無作法をたしなめられ「じゃあいいよ」と捨てゼリフを残して帰ってきたのが豪傑○○さんだったり、用事で来校されていた友だちのお母さんにまでOくんがサインをねだったり、握手をしてからサインをするはずがいつのまにか黙ってサインをもらうだけになってしまったり...と、割愛するにはもったいないエピソードの数々はあるのですが、とにかく割愛。
(うわっ、一文が270字にもなってしまった)


 そんななかで、Yくんがとってもおもしろいことを始めました。握手&サインの相手がなかなか見つからなかったので、ある教室に入りこんでそこで飼っているカエルと握手してきたというのです。

 これはいい! こんなふうに握手の活動が広がっていくことを期待していたのです。
 さっそくとりあげて、みんなに紹介しました。

「Yくんがね、とってもおもしろいものと握手してきたよ。どこかの教室の、カ・エ・ルだって」

 ところが、頭がカタくて融通のきかない子の反応はこうです。
「カエルなんか握手できないよー」
「いやいや、ちゃんと握手できるんだよ。ね、Yくん」
「うん」
「指を出して、ツンツンさわって握手をしたんだって。ついでにサインももらえるといいねー」
「そりゃー、むりだ」
「もらえるかもしれないよ。でも、サインがだめなときには、ちゃんと握手をしたっていう証拠に、握手をしたときの“かんじ”(感じ)を『あくしゅノート』に書いておくといい」
 と言い、Yくんの「あくしゅノート」を見せました。

 そこには、
「かえる ぬるっとしてた」
 と、イラストつきで書いてありました。
(じつは、ぼくが手伝って書いたものです)

 これが1週間前の木曜日(5/27)のこと。以来、家で飼っているイヌやネコと握手したり、栽培しているアサガオと握手したりしながら、「握手&感じを書く」活動が始まりました。


 何人かの「あくしゅノート」を(解読&翻訳して)紹介します。

Eくん 5/29 あさがお げんきそう。
    6/3  みず ぬるいかんじ。
Nくん 5/29 あさがおたち つよそうだった。
Oさん 5/29 わたしのあさがお つるつるしてた。
Hさん 6/1  しょくいんしつ るす。ひんやりしてた。
Tさん 6/3  かぜ つめたかった。さわれなかった。
       ちゃぼ さらさらしてたけど、かたかったところもある。
Sさん 6/3  ちゃぼくん さらさらしてたけど、こわかった。
Kくん 6/1  ちゃぼ あたたかくて、すこしきたなかった。
    6/3  ちゃぼ ふわふわでした。それで、ぜんぜんきょうぼうじゃなかったよ。

*『日刊ひげうさぎ』(1993年度学級通信)No.041-1993-06-04




 もちあがりの2年間で600号ばかり発行した学級通信の最初の2か月分をお届けした。web版400号達成を機に、連載はここでいったん区切りとしたい。
 以降のぶんはテーマごとにページを分け、随時UPしていく。おたのしみに。


web『たまてばこ』 No.400 2003-06-17-Tue