とっぷぺーじ

since 2000.10.07.
おふぃす
ひげうさぎ WHO?
お役立ちリンク
出席簿
濫読の記
ひげうさぎの本
∇よみもの
webたまてばこ
小学生の日記教室
頭の体操
図書室
メールマガジン

∇アルバム
こどもたち
図工作品集
ひめの部屋
「湘南」
∇オアフの風
写真集&旅行記
∇ひろば
うさぎの黒板
こどもの黒板
おえかき黒板
ついったー
めーる
メールはこちら


web『たまてばこ』特集

作文苦手少年のなれの果て

作文が大の苦手だった小学生がやがて物書き志望になり...



作文苦手少年のなれの果て(前)

 小学校時代の“作文苦手少年”( ⇒ こちら)が、中学校に入り“物書き志望少年”へと変身した。一冊の本との出会いがきっかけだった。

  遠藤周作『ぐうたら生活入門』(角川文庫)

 中学1年の夏休みの宿題(大の苦手の読書感想文!)のために買った3冊の文庫本のうちの1冊である。いっしょに買った星新一の『気まぐれロボット』と同じ和田誠による表紙イラストには、白髭、着物、宗匠帽(というのかな?)、杖といういでたちに変装した遠藤周作が描かれていた。

 一読して驚愕。この本に出てくる狐狸庵先生の日常のなんとうらやましいこと!
 柿生の里の隠居生活は、朝寝坊をたのしみ、仕事といっても抜いた鼻毛を原稿用紙にならべるだけ、夜になると変装して街に出かけてはイタズラして人を驚かせてばかり...。
 物書きになればこんな生活ができるのか。

 狐狸庵先生にあこがれて、「狐狸庵」「ぐうたら」と題された本を読み漁った。『おバカさん』『ヘチマくん』などのユーモア小説集にもかたっぱしから手をつけた。
(『海と毒薬』や『白い人・黄色い人』は敬遠し、『沈黙』を読んだのはそれよりも数年後のこと。遠藤周作の半分しか知らない“おバカ”だった)

 物書きになりたい。狐狸庵先生のような生活がしたい。
 しかし、いくらあこがれても物書きになどそう簡単になれるものでもなく、ごろごろしているだけでは作文が上達するべくもない。
 つまりは“物書き志望”などという高尚なものではなく、その実“ぐうたら生活”にあこがれていただけの話である。

web『たまてばこ』 No.268 2001-10-06-Sat


作文苦手少年のなれの果て(後)

 “作文苦手少年”転じて“物書き志望少年”=“ぐうたら生活志望少年”が、なんの因果か教師になってしまった。
 この仕事、作文とは切っても切れない縁にある。自分で文章を書くばかりか、書けない子どもたちに作文を教えなくてはならない。毎朝8時半から始まるチャイムで区切られた規則正しい学校生活も、ぐうたら生活とはほど遠い。

 人生異なもの、である。


 ペラ(=200字詰原稿用紙)8枚ほどの「教育エッセイ」をごくごくマイナーな月刊誌に連載させていただいたことがある( ⇒ こちら)。
 毎月毎月ネタさがしに苦労し、しめきりに追われ、こんなもので原稿料をいただいていいのかと思うような駄文をしあげて投函していた。

 送った原稿は翌々月に掲載される。巻頭の見開き2ページ、大きなあつかいをしていただいた。
 太ゴシックのタイトル下には明朝体で筆者名(=ぼくの名前だ)がクレジットされている。おまけにプロによるイラストつき。すっきりとレイアウトされた自分の文章を見るのは、恥ずかしくもあり、うれしくもあった。
 が、わずか1年の連載を終えてつくづく思った...作家にならなくてよかった!

 月にペラ8枚でこれだけ苦労するのだ。何年たっても狐狸庵先生の境地に達するわけがない。
(そのころには『沈黙』『深い河』をはじめとする純文学も、『女の一生』『小西行長』などの歴史小説も、「遠藤文学」はほとんどすべて読んでいた。“ぐうたら”だけでは食っていけないことがよくわかった)


 行きがかり上、それなりの文章修業はしてきた。『文章作法』のたぐいは手あたりしだいに買って読んだ。本棚をさがせば30冊は見つかるだろう。実作では日刊の学級通信を10年続け、教育書・教育誌の依頼原稿も数十編はこなしてきた。
 おかげで、かつての“作文苦手少年”もなんとか「達意の文章」(意味の伝わる文章)が書けるようになってきた。

 でも、それは「作家」とはほど遠い。文を書くことを生業とし、生活の糧とする。考えただけでも気が遠くなる。太宰治の二の舞だ。
(学生時代、津軽の斜陽館をたずねたこともあるほどの太宰かぶれでもあった。そんなに高尚な悩みではなかったけれど)

 「作家にならなくてよかった」ではなく「作家になれなくてよかった」かもしれない。しめきりに追われることなく趣味で駄文をひねり出し、アマチュア文筆家としてこうして奇特な(失礼!)みなさんに読んでいただいているうちが華である。


 今日10月7日は「おふぃす ひげうさぎ」開設&『web たまてばこ』創刊1周年記念の日。

 日ごろのご愛顧に感謝して。

web『たまてばこ』 No.269 2001-10-07-Sun