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web『たまてばこ』特集

6年1組の物語

『世界で一番すてきな学級通信』の小学生版...かもしれない



     





くじ

 K市立T小学校6年1組。“ひげ”が担任しているクラス、5年生からの“持ちあがり”である。

 年度当初の高学年の仕事のひとつ、子どもたちの委員会の所属を決める。
 7つある委員会のうち運営、放送、飼育栽培、図書の希望者が多い。定員をオーバーしている。「やりたい」という希望が多いのが悩みのタネ。 (明日のPTAがこのくらいだったらなぁ...話をまたそこへ持っていく!)

 立候補の所信表明、話しあいによる調整。どこぞの政党のようだが、このあとが違う。人気や派閥が左右する投票はしない。「やりたい」という気持ちがあって、それをみんなの前で話すことができれば、条件は平等だ。話がうまいかどうか、5年生のときにやったかどうかも考慮しない。くじで決めることにしてある。

 桃色の色画用紙を細長く切った短冊に「1」から番号をふる。番号のある側は“ひげ”がまとめて持って隠し、反対側を希望の子が1本ずつつまむ。みんなの視線が“ひげ”のてのひらに集中する。

「せーの!」

 “ひげ”が手をはなす。子どもたちがいっせいに自分の短冊の番号を見る。「1」から定員の番号までが当選だ。
 「やったー!」という歓声があが...あまりあがらない。静かな当選風景だ。なぜだろう。

 翌日、子どもたちの日記を読んでその謎が解けた。

 喜ぶだけではない。悲しい顔だって見る。それが一番つらい。「ヤッター」の時あんまり満足できないのはこのせいか。

by プラスミン


 「ヤッター、1番だ」
 心の中では大よろこび、外の方はしずかによろこんだ。おちちゃった人もいるし。

by ダイヤモンド


 ドキッ、3番...やったァー、運営に入れるー! うれしくてとびあがりたい気分だった。はずれた友達には「ごめんね」という気持ちでいっぱいだった。

by シナモンロール


 くじにあたった自分の喜びは喜びとして、はずれた友だちのことを気づかい「やったー!」の音量を下げてくれる子どもたち。
 こんなすてきな子どもたちに囲まれて、6年1組がスタートした。


 じつは、このできごとはショックだった。くじに当たった子がはずれた友だちのことをこれほど考えてくれていると、想像もしていなかったからだ。1年いっしょにいた子どもたちを信じきれていない自分にショックだったのだ。

web『たまてばこ』 No.175 2001-04-16-Mon


 幼稚園・小学校・中学校を通じて、歯科検診でひっかかったことはただの一度もない。健康診断票は右上の7番、6番からぐるっとまわって右下の6番、7番まできれいに「/」(斜線=問題なし)がならぶ。「○」(まる=処置済み)の歯もない。正真正銘の「虫歯なし」は“ひげ”のひそかな勲章だった。


 30年ほども前になろうか。6年生の歯科検診を終えた数日後、クラスの中から“ひげ”ともう一人が保健の先生に呼ばれた。虫歯のないきれいな歯なので、「よい歯のコンクール」に出られるという。

 先生の車で学校近くの歯科医へ連れて行かれた。コンクールのための事前審査だった。“ひげ”の歯をのぞきこんだ歯医者さんは、しかし残念そうに言った。

「とってもきれいな歯なんだけど、乳歯があるから...」

 6年生の基準では、たとえ虫歯がなくても永久歯が生えそろっていなければエントリーできないらしい。“ひげ”にはまだ乳歯が残っていたのだ。

(この乳歯とはいまだにつきあっている。生え変わるはずの永久歯がそっぽをむいていて、いつまでたっても生えてこない。そういう構造になっているのだからしかたがない。「よい歯のコンクール」なんてクソ食らえ!)


 担任しているクラスの歯科検診があった。“ひげ”の子ども時代と同様の、処置歯もないきれいな「虫歯なし」の子が32人中5人。せっかく守ってきた歯だ。ずっとずっと大切にしてほしい。

web『たまてばこ』 No.178 2001-04-19-Thu


“音楽”と“音が苦”のはざまで

 ピアノは究極の一本指奏法。声が大きいだけで発声も音程も不安定。絶対音感はなし。楽譜はなんとか読めるがリズム感が悪い。唯一のとりえであるギターもジャンジャカジャンとストロークするだけ。クラシックの“粗”養もない。

 こんな“ひげ”が、あろうことか隣のクラスの音楽を担当している。自分のクラスとあわせて週に4時間。今年度かぎりという条件つきで、学校の事情でこうなってしまった。

 6年生の音楽だ。低学年のような子どもだましは通用しない。歌唱、リコーダ演奏、楽典に鑑賞と、ひととおりのことを授業であつかわなければならない。
 自分のクラスならほかの時間にフォローもできようが、隣のクラスでは音楽だけの1時間が勝負。不完全燃焼のまま教室に戻る子どもたちの姿を見るのがつらいし、申しわけない。
 火水木金に毎日1時間ずつの音楽の授業。かなり重い。

 多くは望んでいない。1年間の最後に「“音が苦”だった」と言われないこと。それだけでじゅうぶんだ。

web『たまてばこ』 No.179 2001-04-20-Fri


マメ

 鉄棒の練習をするとマメができる。はじめは赤く、それが水ぶくれになり、やがて皮がやぶれる。かなり痛いものだ。


 体育の授業が終わると、鉄棒苦手なやんちゃ坊主が声をあげた。

「あーあ、こんなに赤くなっちまったよ」

「マメができて、それがつぶれて、それでも練習して、マメが固くなったころに、鉄棒ができるようになってるよ」

 先生らしくこんなことを言ってやった。すると、くだんのやんちゃ君、

「うわー、低学年の子が聞いたらイチコロのことばだよなー。きっと一生懸命に練習するだろうなー」

 とのたもうた。先生の口車には乗らないぞというわけか。たしかに低学年の子はこれでイチコロだった。おぬし、なかなかやるな。さすが6年生。

web『たまてばこ』 No.181 2001-04-22-Sun


平均92点

 6年算数の最初の単元「分数のかけ算」のテストをした。内容は分数どうしのかけ算。計算問題10題に文章問題5題。
 100点満点で採点したところ、クラスの四分の三の子が90点以上だった。平均点が92点なので、90点をとっても平均点以下ということになる。

 問題がとくにやさしいわけではない。市販テストに準じる内容である。それでこの数字が出るということは、学級としてかなりのレベルに到達している。

 特別なことをしているわけではない。教科書をすみからすみまで勉強する。教室で解いた問題を家でもう一度くりかえす。テスト前にはその単元の問題をすべてやりなおす。自力でできるようになるまで何度も解く。同じ問題を答えを暗記するくらい何度も解く。
 やっているのはこれだけ。教師なら、どこのだれでも同じことを言っているはずだ。

 もし違うとすれば、“これだけ”をどれだけ徹底するか、という点かもしれない。
 “ひげ”は少々しつこいところがある。ストーカー経験には年季が入っている(と“ひめ”が申しております)。あれもこれもと多くを求めることはしないが、これだけはやりなさいと言ったらけっして妥協はしない。最後までやりとげさせる。

 もちろん“ひげ”がいくらしつこくても、それにこたえるだけの気持ちが子どもたちになければ空回りするだけ。昨年度1年間の成果がここにきて目に見えてあらわれてきたのだろう。
 子どもたちの努力に拍手!

web『たまてばこ』 No.182 2001-04-23-Mon


家庭訪問

 放課後の職員室。残っているのは管理職に保健の先生、技能員さん、そして“ひげ”。あとの先生は一人もいない。みなそろって家庭訪問に出かけているのだ。


 家庭訪問──新年度のこの時期に数日間、たいていどこの学校でもおこなわれる行事である。新しく担任した子ども、おつきあいの始まった保護者とのごあいさつのため、また子どもの住んでいる地区のようすを知るため、各ご家庭におじゃまする。

 しかし、この時期に5日間つづけて学区めぐりをするのは、本音を言うとつらいものがある。放課後に仕事はできないし、からだももたない。家庭訪問のある日は、歩きまわる体力を温存するため省エネモードで午前中の授業をすませる、という話もあったりなかったり...。


 ではなぜ“ひげ”が職員室にいるのか。それは持ちあがりの担任だから。全校12学級のうち、今年度は“ひげ”だけが学級を持ちあがった。あとのクラスはすべて新しい担任。
(こういう校内人事もめずらしい)

 「担任は1年が原則」と日ごろ口にしている“ひげ”ではあるが、年に数日、家庭訪問のこの時期だけは「持ちあがってよかった」と思う。みんなが歩きまわっているあいだ、学校でのんびりでき...じゃなくて、たっぷり仕事ができるから。

 持ちあがりバンザイ!
 家庭訪問バンザイ!

web『たまてばこ』 No.183 2001-04-24-Tue


連休後

 5月中旬 修学旅行準備〜本番
   下旬 研究会
 6月上旬 鑑賞教室、社会見学
   中旬 授業参観・保護者会、ドッジボール大会
   下旬 水泳学習開始、個人面談
 7月上旬 平和学習、1学期のまとめ、通知票準備
   中旬 通知票しあげ


 連休が明けると、毎週のように行事が計画されている。どれも気をつかう、準備が必要な活動ばかりである。プレッシャーのかかる音楽の授業だって18時間×2クラスもある(⇒ No.179 参照)。

「連休のあとは夏休みまで“休みなし”だからね。とくに6年生の担任は...」

 自嘲気味に話していたことが目前にせまってきた。なんだか五月病になりそう。


 読者のみなさんへ。
 「教師が言われていちばんうれしいコトバ」ってどんなコトバだと思いますか。“ひげ”の経験では、これにまさるコトバはない、言われたらイチコロという“ほめ言葉”があります。
 1週間後の No.200に正解を書くつもりです。考えてみてください。

web『たまてばこ』 No.194 2001-05-06-Sun


負傷

 外野から内野へ入ろうとしたときだった。相手チームの女の子がボールをかまえ、“ひげ”をねらっているのが見えた。
 だいじょうぶ、よけられる。一瞬のうちに判断し、軽くジャンプした。

 横手から投げられたボールが飛んでくる。予想以上に強く速いボールが空中にある“ひげ”の足にあたる。からだが傾く。ちょうど足払いをかけられたような感じでバランスをくずし、床に落ちる。受身をとったつもりが、腰、両腕、背中と衝撃がはしり、大の字にひっくり返る...。

 体育館に歓声があがった。女の子が先生をあてた、それも一発でノックアウト。そんな称賛と感嘆のまじった歓声だった。


 昼休みの体育館。6年生2クラスの子どもたちがドッジボールをしている。雨が降っていて外で遊べないということもあり、40人近くは集まっていただろうか。
 いつものように片方のチームに入り、かなり本気でボールを捕ったり投げたりしていた。そのときのできごとだった。時間にして数秒。不覚だった。


 左腕のひじの横が痛い。着ていたシャツのボタンをはずし、袖をまくってみた。赤くすりむけたようになっている。シャツの布の上から体育館の床で強くこすったような状態。擦過傷とも、摩擦による火傷ともいえる。
 時間がたつにつれて痛みがひどくなる。保健室で消毒。2センチ四方ほどの皮膚がむけ、リンパ液が沁みだしている。深くえぐれている部分もある。

 傷口を乾かしたほうがいいと思い、ガーゼはあてていない。袖をまくったまま、どこにもぶつからないようひたすらじっとしている。

 事故発生から7時間経過した。傷口はまだ乾いていない。風呂はムリ。寝るのも一苦労。
 それよりなにより、とにかく 痛い! ~(>_-

 遅い夕食どき。痛みは引かず、傷も変化なし。ガーゼでふたをしないと寝るに寝られない。しかし、ふつうのガーゼでは傷にはりついてしまい、はがすときに地獄を味わうことになる。「傷につきにくいガーゼ」という便利グッズが出まわっているようだが、あいにく家には置いてない。

 見るに見かねて“ひめ”が席を立ち、雨の中、近くのドラッグストアへ走ってくれた。ありがたや、ひめ様 女神さま。

「いろんな種類があったわ。『キズにつきにくい』っていうのと『キズにつかない』っていうのとで、『つかない』が決め手。これを買ってきたわよ」

 パッケージには「はがすとき痛くない」「キズにつかない」「アルミガーゼ」などの文字がならんでいる。
 さっそく傷口を消毒し、ガーゼに軟膏をぬり、腕にはりつける。“ひめ”が歯痛のときにもらってきた頓服薬も1錠、念のため飲んでおく。

 しばらくたつと、痛みがひいてきた。さっきまでのヒリヒリジュワーウウウイテーという感覚がウソのようだ。こうしてモノ書きのまねごとできるようになった。
 これでまた“ひめ”に頭があがらなくなった。

web『たまてばこ』 No.196 2001-05-08-Tue


ハイスペックPC

 CPU100MHz、メモリ16MB、HD容量...書きたくない。

 職場に10月から導入されるPCのスペックである。

 ケーブルネットに接続されるので、インターネットやり放題の環境は整うという...が...「おふぃすひげうさぎ」トップページを表示するのに何分かかるだろう。200万画素クラスのデジカメからデータをとるのはまず無理。ソフトを2つ開いておくこともできそうにない。動画? 静止画すら厳しいというのに。

 うーん、廃スペックPCだ (~ヘ~;)

web『たまてばこ』 No.197 2001-05-09-Wed


こんのひとみ

  パパとあなたの影ぼうし

 運動会のかけっこあなたは みんなの一番後ろ走ってる
 パパは本気で歯ぎしりしてる 真っ赤な顔をして走るあなた見て
 パパはいつも何でも一等で 思い通り生きてきたから
 不器用な息子を思うばかりに あなたにつらくあたるのね

 逆上がりがすぐにできない子はできる子よりも
 痛みがわかる分だけ強くなれることを
 パパに伝えたいね いつかわかる日が来るよね
 放課後 校庭 鉄棒に映る ママとあなたの影

 パパは今度初めて仕事で 一等をとれなかったの
 弱気な顔を見せてぐちって その方がずっと好きになれる
 「ねえ、パパ逆上がりを教えて」息子なりの励ましかしら
 日曜の午後パパはしぶしぶ あなたと外へ出た

 何度も何度も足が宙を切って落ちる
 それでも空に向かって大きく足を振り上げる
 パパはもうわかってる あきらめないのが大切だって
 夕日の校庭 鉄棒に映る パパとあなたの影



 NHK「みんなのうた」4、5月の歌として放送されている曲。「みんなのうた」版は太田裕美が歌っているが、原曲は「こんのひとみ」による。


 こんのは元は家庭の主婦という“一般人”であったが約6年前から作詞作曲を始めるようになり1999年5月に ミニアルバム「言い残した言葉」をリリース、本格的に音楽活動を始めた。
 こんのが作る歌のテーマはどこの家庭にでも潜んでいるものばかりで、「パパとあなた〜」も仕事に忙しく家庭になかなか目を向けない父親と鉄棒もうまくできない子供のことを描いたほのぼの作品。

「サイケイスポーツニュース」より こちら から



 言葉が素敵だということを思い起こさせてくれる詩があった。こんのひとみさんというシンガーソングライターが歌う「言い残した言葉」だ(CDタイトル)。
 子育てをしながら、子供にそして自分にささやくように歌ってきた彼女が、少しずつ書きため、音をつけ、作られた作品は、母の子守歌のようなやさしい音色で私たちを包みこんでくれる。教室に通えなくなってしまう子供の心を歌った「保健室」をはじめ、一見豊かに見える社会や家庭で、孤独や寂しさ心の傷を抱え、倒れそうな私たちの言葉を紡いでくれる歌には、うれしさとせつなさの涙が流れてしまうほど。

「ACCESS杉並」より こちら から



 音楽の授業の最後の5分、こんのさんのCDから1曲ずつ聴いてもらっている。いつもはにぎやかな子どもたちも、透きとおった声がつむぎだすことばをひとことも聞きもらすまいと、じっと聴き入っている。「じわーっとくる」「涙が出そうになる」という感想を何人もの子が書いてくれる。

 ピアノ、ギター、アコーディオン...。どの曲もとてもシンプルにアレンジされている。ガチャガチャしたにぎやかな音楽の中で育ってきた子どもたちには物足りないかもしれない。
 しかし、そんな心配は杞憂にすぎなかった。饒舌なほどの音づくりをして飾りたてなくても、はやりのダンスがついていなくても、歌詞と旋律と歌唱とがしっかりと彼らの心にとどいている。


 こんのさんに「出前ライブ」をお願いした。快くお受けくださり、学校の体育館でのライブが6月に実現する。どんな出会いとなるのだろう。子どもたちも保護者もそして“ひげ”も、楽しみにしている。


 こんのひとみさんのHPは こちら からどうぞ。

[追記]“ひめ”は高校時代、こんのさんの1年後輩だったとのこと。

web『たまてばこ』 No.198 2001-05-10-Thu


殺し文句

「教え方がじょうず、わかりやすい」
「授業がおもしろい」
「子どもの気持ちを考えてくれる」
「子どもが伸びた、力がついた」
「一生懸命やってくれる」

 どれも言われてうれしい“ほめことば”である。
 「すてき」「かっこいい」...なんて言ってもらったことはないけれど、これもうれしい _(^m^;)ゞ
 しかし、ベストではない。

 教師が言われていちばんうれしいことば、イチコロになることば、“教師殺し”に最も効くのはこれである。

「また先生に担任してほしい」

 1年のあいだにはいいこともあればいやなこともある。クラスがまとまらなくて苦労することもあるし、子どもを介して間接に、あるいは直接に、保護者と衝突することもある。
 いろいろあってようやく年度末。これでよかったのかと自問しつつ任を終える。そんなとき「また担任してほしい」と言うひとことを聞くと、1年間の貸借表、トータルでプラスだったんだとほっと肩の荷がおりた気がする。


「また先生に教えていただきたいって、いつも話しているんですよ」

 前に担任した子の保護者がかけてくださったことば。
 自分の子をあなたに1年間あずけたいと言っているのと同じだから、お世辞半分としても、これにまさる“ほめことば”はない。舞いあがってしまう。教師って、単純なものだ。


 おまけ。反対の意味での“殺し文句”はこれ。

「先生のクラスにだけはなりたくない!」

web『たまてばこ』 No.200 2001-05-12-Sat


サングラス

 サングラスが欲しくなった。
 と言っても、急に欲しくなったわけではない。長いことあこがれていた。しかし“ひげ”は眼鏡等使用者。コンタクトではなくふつうのメガネをかけているので、サングラスは度付にしないといけない。

 ここに問題が生じる。メガネ店に入って度付サングラスを注文するのが恥ずかしいのだ。ふつうのメガネを見立ててもらうのはどうということもない。それがことサングラスとなると、なぜかふんぎりがつかなくなってしまう。

 初めてパーマをかけたとき(30年前)、初めてカラーリングをしたとき(2年前)、どちらも同じだった。思い立ってから長いこと逡巡し、ようやく実行にいたることができた。
 今回の度付サングラスもしかり。“ひげ”の三重苦である。

 それが、このところ連日の強い日差し。紫外線が“欲しいモード”に化学変化を起こしたのか、一気に“購入モード”に突入してしまった。


 港南台にあるメガネ店。近隣では有名な安売り量販店のひとつである。平日の昼間というのにかなりにぎわっている。
 季節がら、サングラスもたくさんならんでいる。

「中田みたいなのがいいんだけど」
「えー、中田?」

 ファッションアドバイザー(“ひめ”のこと)の不満とも不審ともとれる返事。

「じゃあ、イチロー...」
「それならわからないこともないわ」

 “ひげ”がイチローに似ているというわけではないが、希望のイメージは伝わったようだ。いくつか試用してみて、決定。
 レンズの材質、色などをオーダーすると、出来上がり予定が土曜日とのこと。

「もう一日早くなんとかなりませんか」

 無理を承知で頼むと、無理をして「金曜日までになんとかします」とのこと。待ち遠しい。


「おお、こわい」

 金曜日。念願のサングラスを手に入れた“ひげ”の顔を見たTAKUの第一声がこれだった。そして次のひとこと...。

「不良のおじさんだ!」


 あれ、だいじなこと、書いてないじゃない。なぜ金曜日までにしあげてほしかったのかってこと。土曜日からの修学旅行に持っていきたかったんでしょ。
 いくら“日光”だからって、サングラスにこだわることもないんじゃない...。

by ひめ


web『たまてばこ』 No.203 2001-05-18-Fri


♪明日があるさ

 音楽の時間、「明日があるさ」の替え歌をつくらせた。

「6年1組らしさが出ていて、日光に関係のあること」

 ギター片手に、子どもたちから出されることばを曲にのせてみる。字余り字足らず、下ネタのオンパレード...。6年生の頭って、こんなものか。


 苦節20分。できあがったのが下の歌。

 ♪夜中におかしを食べてたら
  先生に見つかりおこられた
  あせることないさ あせることないさ
  先生もどうですか

  廊下を走った奴がいる
  枕を投げてる奴もいる
  一晩ぐらい 一晩ぐらい
  さわいだっていいじゃない


 「あせることないさ」のくりかえし、「〜奴がいる」のパロディ。みごとな本歌取りになっている。6年生の頭って、たいしたものだ。( ← さっきと言ってることが違う!)

 こんな歌でもりあがっていけば、魔のげろげろいろは坂も乗り切れるだろう。


 これから日光へ向かう。“愛用の”サングラスをかけて...(^m^;

web『たまてばこ』 No.204 2001-05-19-Sat


連絡帳

 修学旅行の前日、連絡帳が届いた。あることがらについて、担任あての連絡だった。翌日からの旅行についてひとこと...もふれていなかった。


 修学旅行の翌日、連絡帳が届いた。旅行中にぐあいが悪くなった子の保護者から、「お世話になりました」とお礼が書かれていた。


 修学旅行の翌々日、連絡帳が届いた。あることがらについて、担任あての連絡だった。前々日までの旅行についてひとこと...もふれていなかった。


 そんなもんかなあ。

web『たまてばこ』 No.207 2001-05-23-Wed


東照宮クイズ

 旗を掲げた案内人さんについてゾロゾロ歩く...そういう見学のしかたは好きではない。案内人さんの説明はたしかに簡にして要をえているが、ムダがなさすぎる。話し終わるとすぐに次に進んでしまう。列の後ろのほうにいると、追い立てられるようについて歩くのがせいいっぱい。文化財をゆっくり見学するひまもない。

 そこで、今回の修学旅行、東照宮の中はグループによる自由行動とした。いくつかのポイントを指定し、そこはかならず見てくるように。順序は自由、時間のゆるすかぎり何度でもOK。そんな計画をたてた。

 くふうしたのは、指定したポイントごとに問題を設定したこと。東照宮をおとずれたことのあるみなさん、記憶の糸をたぐりながら考えてみてください。


【1】神厩舎にいるのは何色の馬か?

【2】陽明門の魔除けの逆柱は右から数えて何本目か?

【3】眠り猫の彫刻の反対側にあるのは何の彫刻か?

【4】坂下門から家康の墓所までの長い階段、何段あるか?

【5】鳴き龍はどんな鳴き声か?


【1】ここの馬、ふだんは広い牧のある近代的な厩舎で暮らしているらしい。毎日わざわざ木造の神厩舎に連れてこられ、見せ物にされているという。“勤務時間”は10時から14時。この時間帯をのがすと、馬はいなくなってしまう。
 ここにいる馬、栗毛か白馬です。さてどちらでしょう。

【2】陽明門を支える白い柱。猿の顔にも見える文様がほどこされている。手前側に4本、中ほどに4本、奥側に4本立っている計12本のうち1本だけ、文様が逆になるように立てられている。“完璧”をきらう、魔除けのため、などと伝えられる。
 この逆柱、奥4本のうちむかって右から何本目でしょう。

【3】家康の墓所の入り口である坂下門。この門の上に左甚五郎の手になる「眠り猫」の彫刻がある。見落としてしまいそうなところにある小さな彫刻なので、「↑頭上 眠り猫」という看板もついている。
 では、この門の反対側、墓所から下りてきたときに見える彫刻、「眠り猫」のちょうど裏側に彫られているのはいったい何でしょう。

【4】あの階段をのぼるのはひと苦労。疲れてあきらめないよう、階段の数でも数えながらのぼってください。

【5】本堂の中で係の人が拍子木を打ってくれる。ほかの場所では「カーン」という乾いた木の音にしか聞こえないのに、たった1か所、大天井に描かれた龍の真下にいるときだけ違った音に聞こえる。それが龍の鳴き声と伝えられている。
 さて、どんな声でしょう。


 グループになった子どもたちは、自分たちで考えた順にポイントをまわりクイズを解いていく。

「逆柱は○本目だったよ」
「龍の鳴き声、・・・って聞こえた」
「馬、もういなかった。2時までなんだって。残念」

 引率の教師に口々に報告してくれる。印象深い見学ができたようでなによりだった。

web『たまてばこ』 No.208 2001-05-25-Fri


書きため

 子どもの日記をメインにした学級通信をほぼ日刊で発行している。その名も『たまてばこ2001』。昨年度の学級通信『たまてばこ』を進化させた、つもりのタイトルだ。

 B4版サイズ1号あたり約1000字の分量。日記のコピーをPCの横に置き、片っ端から「メモ帳」に打ち込んでいく。打ち込んだデータをワードに保存してあるテンプレートにコピー&ペースト。かんたんなコメントを書きこんで、プリントアウト。およそ25分で1号がしあがる。
(タイピングだけなら1000字で15分といったところか)

 子どもたちは教室のできごとを日記によく書いてくれる。算数テストのこと、音楽の授業のこと、バスケットボールのこと、読んでいる本のこと、休み時間の遊びのこと...もちろん修学旅行のことも。

 それらの日記をテーマごとに「メモ帳」に書き込み、分類しておく。およそ1号ぶんたまったところでめでたく発行とあいなる次第。


 未発行の日記がたまってきた。とっておいたコピーをつまむと数ミリの厚さになる。せっかく書いてくれた日記だ。このままうずもれさせてはもったいない。みんなで読みあうためにも保護者に読んでいただくためにも、学級通信として発行したい。

 PCの前に陣取り、一気に打ち込んでいった。5000字は書いただろうか。テーマごとに分類された「メモ帳」のファイルがいくつもできる。

 字数が足りずに発行にいたらないファイルがある。いっぽうで、1号約1000字ぶんの文章がたまり、印刷にこぎつけるファイルもでてくる。

 先ほどプリントアウトした『たまてばこ2001』は3号ぶん。3日先までの通信原版ができあがったことになる。あとは学校の高速輪転機で印刷するだけ。

 これで明日からの「コンフェデカップ」を安心して楽しむことができる...(^m^;

web『たまてばこ』 No.211 2001-05-29-Tue


筋肉痛

 からだが重い。とくに胸から腕にかけてがボワーッとしている。鉛の重りをぶらさげているようだ。  こんなになってしまうようなこと、何かしたかな。思いあたることといえば...。


 前日の体育の時間だった。運動場で鉄棒の授業。
 さかあがり、足かけあがり、後ろふりおり、グライダー、両膝かけ後ろ回りおり...ぜんぶで15種類の技ができたら合格なので、子どもたちはできる技を数えながら練習している。

 同じ「さかあがり」でも、助走あり、助走なし、そして懸垂さかあがりと、こまかくわければ技の種類が増える。そんな説明をしていると...。

「先生、『懸垂さかあがり』ってどういうの?」
「自分より背の高い鉄棒にぶらさがって、足が地面から離れた状態から『さかあがり』をする技」
「えー、そんなのできないよ。先生やってみて!」

 よし、いっちょやったるか。手をのばし、30センチほどジャンプして高鉄棒に順手でぶらさがる。両腕に力をこめ、ひじを曲げる。同時に腹筋を収縮させて両足をもちあげ、一気に逆さ姿勢になって鉄棒にももをつける。

 ウーン!

 かけ声とともに最後のひとふんばり。クルッと回転し、高さ2.3メートルの鉄棒上で“つばめ”の姿勢をとる。成功。

「すごーい!」

 見ていた子どもたちに感嘆の声が広がる。なかなかいい気分。
 君たちの3倍以上のトシだぞ。われながらたいしたもんだと悦に入ったのはいいが、わずか2秒ほどの試技で筋力を使い切ってしまった。筋肉に乳酸がたまっているのがわかる。
 ボロが出ないうちにと鉄棒から飛び降り、別のところへ行こうとするところに声がかかった。

「先生、もう1回やってよ」
「もうだめ。疲れた」
「見てない人もいたよ」
「いまので今日一日ぶんのパワー、使い切っちゃった。もう無理」
「じゃ、あしたのぶんのパワー使って!」

 うまいこと言うもんだ。このひとことで、もういちど挑戦することにした。よせばいいのに。

「みんなー、先生がすごいのやるよー」

 ごていねいにギャラリーまで集めてくれる。子どもたちの視線を感じる。こうなったらやるっきゃない。エイッ...。


 からだが重くなったのは翌日の夜のこと。
 運動の疲れが当日出るのが二十代、翌日なら三十代...ということは、まだ三十代といばっていられるか。

 もっとも、その筋肉痛が翌日どころかあと2日もひきずるようではね...(;´д`)

web『たまてばこ』 No.212 2001-06-02-Sat


学級句会1

 日光修学旅行のまとめに、子どもたちがつくった俳句で「学級句会」を開いた。

 投句されたのは78句。一覧できるように印刷し、一人5句選ばせた。もちろん「選は自作以外から」という句会のルールにのっとっている。
 家庭にもよびかけ、ベスト5を投票していただいた。父母兄姉それぞれが5句ずつ選んでくださったり、祖父母が投票してくださったり、選んだ5句にていねいなコメントをつけてくださったり...ぜんぶで28人分の選をいただくことができた。

 句会に参加した子どもが30人。家庭からの28人と担任(=“ひげ”)票、担任家族(=“ひめ”)票、校長票があって、投票総数61人となった。したがって、満点は60点。
 通常の句会をシンプルにした形で、選の発表、講評、作者の発表とすすめていった。

 得票上位の句からいくつかご紹介しよう。


  五月雨や東照宮はおもちゃ箱

  雷にせなかを押され早歩き

  ズドドドド滝がよだれをながしけり

  新緑はよいをおさえる薬かな

  夏の空すましたモデルお猿さん

  暑き中きのうのつかれ風呂でとる


 掲載した6句は9点句と8点句。得点にして4位、5位の句、いわゆる入選である。参加者の1割以上が選んだことになる。

 最初の2つは東照宮見学を詠んだもの。
 1句目。陽明門の彫刻、数々の灯篭、眠り猫など、東照宮の文化財すべてをまとめて「おもちゃ箱」と表現したところが秀逸。子どもにしか見つけられないコトバだろう。家康さんもびっくり!

 2句目。グループでの見学中に夕立にあってしまった。雷鳴に首をすくめ早足になるようすを「せなかを押され」とすなおにたとえた佳句。ゴロゴロ、キャーこわい!

 3句目は評価のわかれた句。「ズドドドド」というオノマトペ(擬音語)はよし。問題は「よだれ」というひとこと。このたとえをうまいという子、滝にはふさわしくないという子が半々になった。

 4句目と5句目はともにいろは坂のこと。
 車窓から見えるあざやかな新緑にみとれているうちにバス酔いもどこかへいってしまった。それを「薬」と言い切ったところが眼目。秀句である。

 話題の日光野生猿軍団をいろは坂走行中に見つけた。観光客からかすめとったおみやげを食べている。大あわてでカメラにおさめようとする子どもたち。猿はしらんぷりしてラッキョウ(!)をほおばっている。たった十七文字にこれだけのことをつめこむとは。

 最後は帰宅後の充実した心地よい疲れを表現した句。ふー、疲れたー。でも楽しかったなー、また行きたいなー。

web『たまてばこ』 No.215 2001-06-06-Wed


学級句会2

 日光修学旅行を詠んだ学級句会で10点以上の高得点を獲得した6句は下記のとおり。


  夏の夜かべに耳あて話聞く

  おやすみと何回言ったか夏の夜

  くっつけば汗が出る出る消灯後

  おこされてここはどこだと夏の朝

  湯の滝にさわってみれば指ひやり

  先生の雷落ちたバスの中


 この6句のうち3句が10点を獲得し、同着で第3位。4位(9点)、5位(8点)とは紙一重の差だった。
 ついで第2位が2句あって、ともに14点。3位とはある程度の差がついての入選である。

 そして堂々第1位の1句。驚くべし、なんと大量31点もの票を集めたオバケ俳句がある。子どもからも大人からもまんべんなく選が入り、投票者の過半数がこれを選句したことになる。まさにダントツぶっちぎりの特選トップ賞である。

 読者のみなさん、どれがトップ賞の1句だと思いますか。答えは書かずにおきましょう。


 恒例の、と言っても2回目だが、担任(=“ひげ”)による講評。

 前半3句はホテルの部屋でのできごとをとりあげた句。同じ場面を吟じた句が上位6句の半数をしめているのだから、修学旅行の夜はだれにとっても印象深いのだろう。

 1句目。となりの部屋のようすが気になってしかたがない。もう寝たかな。しー、声が聞こえるぞ。なんの話をしているのだろう。聞いてみよう。あれ、ケンカしてるみたい...。できごとをストレートに表現したところが多くの共感をえた。

 あしたは「いろは坂」だから、もう寝よう。うん、そうしよう。おやすみ。
 (-_-)zzz°°°(^_^)(^_^)(^_^)(^_^)( ^ _ ^ )(^○^) ハハハハ
 やっぱり寝よう。うん、おやすみ...。
 こんなことをくりかえしながら、いつのまにか夜が更けていく。だれにでもある経験をさりげなく切りとった2句目。作者のたしかな“目”を感じる。中七の字余りはまったく気にならない。

 3句目。中七の「出る出る」が一句のポイント。読みあげたときのリズムが心地よい。学習した「柿食へば〜」の本歌取りかと作者にたずねたら、「ノー」という答えだった。無意識のうちに芭蕉になっていたのかもしれない。

 夜、ぐあいの悪くなった子がいた。みんなとは別室で休ませ、朝までグッスリ眠ることができた。朝、保健の先生に「おはよう、○○ちゃん」と起こされたが、まだ寝ぼけている。まわりを見まわすきょとんとした表情が目にうかぶような4句目である。

「『湯滝』というくらいだから、お湯が流れているんですよ」
 バスガイドさんの話の定番。ハイキングの終点、湯滝に着いた子どもたちはさっそく流れている「湯」に手をひたしてみる。
「なんだ、冷たいじゃん」
 5句目は下五の「指ひやり」にとどめをさす。

 その湯滝で、靴をぬらしながら滝壷まで行ってしまった子、集合時刻に遅れて迷惑をかけた子...戻ったバスで待っていたのは鳴き龍ならぬ担任の雷だった。
 6句目を書いたのはその当事者ではなく、とばっちりで雷を聞いてしまったほかの子。叱られた当事者には俳句をつくる余裕などなかったのだろう。

(ちなみに、「汗」「滝」「雷」が夏の季語)

web『たまてばこ』 No.216 2001-06-08-Fri


学級句会3

 エントリー78句中、8点以上の入選句は12。この中に担任(=“ひげ”)選の5句がすべて入っているわけではなかった。
 衆目の一致するところの“名句”のほかに、「だれがなんと言おうと自分はこれがいい」という句があっていい。それが俳句のおもしろさであり、句会の醍醐味である。

(担任選5句のうち、入選句と一致したのは3句だけ。もしかすると“ひげ”がたんにズレているだけかもしれない。なんてったって“ひねうさぎ”というくらいだから)

 下記が入選しなかった担任選の2句。


  鶯の鳴き声まねてさあ出発

  ハイキング戦場ヶ原夏の空


 戦場ヶ原を小一時間あるく。汗も出てきた。木陰でひとやすみしよう。静寂の中に鳥のさえずりが響く。ひときわ大きな鳴き声。ウグイスだ。ほんとにホーホケキョ≠チて聞こえる。ホーホケキョ! さあ、行こうか。
 十七文字の中に景色も音も肌の感触も書き込まれている。佳句。

 2句目。78句中ただこれだけという特徴をもった1句。用言を1語も使っていない。ことばの正しい意味でユニークな句である。
 おそらく作者は意識してそうしたのではないだろう(効果をねらって作ったのだとしたら、末おそろしい)。 課題の5句をなんとかそろえようと苦労した結果の“五七五名詞(句)3語ならべ作戦”にちがいない。それが絶妙な味をかもしだしている。

 以下は選外秀句。


  仁王像虹出てもまだおこってる

  鳴き龍や家康守る走り梅雨

  眠り猫雷鳴っても眠ってた

  親子杉三人ならび夏すごす

  暑い夜みんな足出しねむってる

  滝のたびみんなで写真はいポーズ

  いろは坂主役とられて桜ちる


 句会の報告は以上で終了。以下はおまけ。

 全国レベルでの力だめしにと、30句ほどを「インターネット・ハイク・ワンダーランド」に応募した。もちろん本人の了解済み。
 予選を通過する句が出るかどうか。結果は1か月後。

*「インターネット・ハイク・ワンダーランド」は 「蝸牛新社」 のHPから。

web『たまてばこ』 No.217 2001-06-10-Sun


予選

 全国レベルでの力だめしにと、30句ほどを「インターネット・ハイク・ワンダーランド」に応募した。もちろん本人の了解済み。
 予選を通過する句が出るかどうか。結果は1か月後。

 ...と思っていたら、10日付で配信されたメールマガジンに結果が載っていた。

 ずーっと読んでいくと、予選を通過した句が7句もある!


  五月雨や東照宮はおもちゃ箱

  仁王像虹出てもまだおこってる

  眠り猫雷鳴っても眠ってた

  くっつけば汗が出る出る消灯後

  おこされてここはどこだと夏の朝

  湯の滝にさわってみれば指ひやり

  夏の空すましたモデルお猿さん


 学級句会の結果と微妙に違っているのがおもしろい。過半数の票を集めたオバケ俳句が選にもれているところなど、とくに興味深い。

 選者の あらきみほ さんはこんなコメントを書いてくださった。

 T小学校の六年の皆さんは、修学旅行で日光へ行ったときのことを題材に俳句をつくって「学級句会」をしたそうです。

 修学旅行の出来事を俳句にしたことで思い出は確かなものとなり、学級句会をしたことで、もう一度思い出すことができましたね。
 また、先生だけが選んだ俳句というだけではなくて、みんなが参加して選んだ俳句であることがステキです。

 俳句は、作るだけでなくて、好きな句を選んだり、いいと思う句を選ぶことも大切なことですから。

 先生や俳句を作っているご家族の、熱心で、ほんの少しだけ子どもの背を押す後押しの力が、きっと子どもが俳句を作るきっかけとなっているのだと思いました。


 6年1組がとくに俳句に力を入れているというわけではない。国語の学習の発展として修学旅行で俳句をつくり、せっかくなので句会という形式で鑑賞の学習もしてみた。で、せっかくのついでに、インターネット上のコンクールに応募したら、瓢箪から駒が出てきた、というわけである。

 それでも、プロの目にとまっての予選通過だから、自信を持っていいだろう。クラスにとって、また一つ大きな歴史が刻まれた。


 本選の結果は2002年の5月5日発表という。最優秀賞1句、優秀賞5句、佳作20句。そこまで期待するのはちと虫がよすぎるかな...。

*「インターネット・ハイク・ワンダーランド」は 「蝸牛新社」 のHPから。
 クラス関係者でご希望の方にメールマガジンのバックナンバーを転送します。アドレスを教えてください。

web『たまてばこ』 No.218 2001-06-11-Mon


出前ライブ

 「こんのひとみ」さん(⇒ No.198 参照)を学校におよびした。6年生2クラス合同の授業参観という位置づけ。
 外は前日からの雨がまだ降り続いている。空気がしめっぽい。
 5校時開始のチャイムが鳴る。体育館に集まったおよそ100人の子ども、保護者の目がマイクをもつこんのさんに注がれる。出前ライブが始まった。

 歌と語りの70分。“ひげ”の筆力ではとうていこの感動を表現することができない。当日の子どもたちの日記を一部分ずつ抜き出してご紹介する。


 「パパが家を出た」という曲を最初に聞いた。そのまえにお話をしてくれた。小さいころのこんのさんのことだと言っている。その話を聞いたあとに歌を聞いた。そうしたらやけに悲しくなってきた。涙がながれはしなかった。でも、目の中にあった。
 こんのさんはきれいな心を持ってる。絶対。これだけで大好きになった。


 こんのさんはお父さんがいないという話をしたあとに、『パパが家を出た』の時のこんのさんをみてたら、なみだがでそうになりました。どうしてかわからないけど。

 一番初めの歌は「パパが家を出た」だった。まさかその歌の主人公がこんのさんだったとは思いもしなかった。その歌は日本中のぼしかていの人にとどくと思う。こんのさんもそう思いながら歌っていると思った。
 すべてのしにいみがあって、みんなにつたわる。で、みんながいい歌だと思う。それでこそかしゅ。顔の問題じゃない。歌がいいからファンになる。
 私もしょうらいの夢がアイドルなので、こんのさんのようなかしゅになりたい。


 歌も声もすごくよかった。けど、私は歌と歌の間の話が最も印象に残った。
「どんなつらいことがあっても、世の中には色々な人がいて、自分よりつらい人がいっぱいいる」
 と聞いた。
 他にもいろいろ...母子家庭という言葉が出た。私はそんなことはない。けど、私もこんのさんの気持ちがわかる気がする。
 とにかくよかった。こんのさん、がんばるパワーをありがとうございます。


 こんのさんの歌には楽しい歌もあるけど、悲しい歌もある。その悲しい歌を歌いながらも、よくあんなにえがおで歌えるのがすごいと思った。自分にはこんなことできない。やっぱりすごいと思った。
 心の中で苦しくてたまらないのかもしれない。泣きたくてたまらないのかもしれない。でも、そのぶん「こんのさん好き」とかいわれて、うれしそうだ。
 悲しくてうれしい仕事だなと思った。


 母子家庭の子の気持ちがなんだかわかるような気がする。こんのさんはなみだをふいていた。つい私もなみだがうかんできてしまった。

 まるで語りかけてくれるように、ソフトにやさしく歌ってくれた。こんのさんの声はとてもきれいだった。
 詩をよく聞いていた。やさしいけれど、ドキッとするところが必ずある。
[中略]今日のライブは、しんみりジーンとむねにくる部分と楽しい部分と、両方あったなー。
 こんのひとみさん、短い時間でしたが、私は一番前にすわっていて、歌声を聞いて、心の中がポッと熱くなりました。ありがとうございました。


 曲を聞いていたり話を聞いているとき、なんか心、むねがキュンとなってしまいました。でも、とってもいいコンサート、ライブでした。

 私は歌にも感動したが、こんのさんがT小の体育館にわざわざきて下さっていると思うと、幸せだった。
 ライブが終わり、ゆうきを出し、こんのさんに声をかけてみた。「ありがとうございました」というと、こんのさんは笑いながら「ありがとう」とあくしゅをしてくれた。あ、あこがれのこんのさんとあくしゅ。
(本当はサインでももらおうと思ったが、やめといた)


 夜、おフロのゆぶねの中で『パパとあなたのかげぼうし』をさいしょからさいごまでうたうと、のぼせてしまった。今日はサイコーの一日だった。


 「こんのひとみ」公式HPは こちら からどうぞ。

web『たまてばこ』 No.222 2001-06-16-Sat


シイナ

 漢字テストを採点していた。「スイソク」を「椎測」と書いている子がいたので、呼んで話をした。

「この字、どこか間違ってるよ」
「うーん...わかった! キヘンじゃなくてテヘンだ」
「そう。じゃ、キヘンにフルトリ(隹)でこの字(椎)、なんていう字か知ってる?」
「知らない」
「シイノキの椎、シイタケの椎、椎名麟三のシイっていう字だ。そんな人、知らないだろうな」
「あ、知ってる、椎名リンゾウ!」
「そうそう、シイナの椎だ。そんな人、よく知ってるね」
「エヘヘヘ」


 椎名麟三。小説家、キリスト教文学者。『邂逅』『私の聖書物語』など。若いころ、少しばかりかじった覚えがある。しばし懐かしい思い出にひたる。


 帰りがけ、シイナの子がやってきた。

「先生、椎名リンゴ、わたし好きなわけじゃないんだ。ただ知ってるだけ」

 ムム...リンゴ?
 シイナリンゴ...椎名林檎...リンゾウじゃなくてリンゴ!

 この子が好きなのはモー娘にキンキ。愛用の下敷きには矢口の顔が大きく笑っている。いまどきの6年生が椎名麟三を知ってるわけ、ないよな。
 さっきはまわりがざわざわしていてリンゴがリンゾウに聞こえてしまったのだ...苦しいいいわけ。

 脳ミソばかりか、耳も四十代になっていた...。

web『たまてばこ』 No.225 2001-07-21-Sat


あまのじゃく

 逮捕された中学校教師をかばうわけではないけれど、この事件、どこか釈然としないものを感じる。中学1年生の女の子が携帯を持って家出し、ツーショットダイヤルに電話する、それをゆるしてしまう世の中についてである。
(“世の中”ということば、ほんとうは“家○”と言い切りたい)

 いま担任している子どもたち、目の前にいる子どもたちも、あと1年たてば被害者の女の子と同じ歳になる。彼女たちが中学に入って4か月、最初の夏休みに家出して携帯からツーショットダイヤル...考えたくもない。

 でも、それが現実の社会なのか。
 それとも、まわりの配慮があればそういう行動を未然に防ぐことができたのか。“まわり”の一つである学校にできることなんて、そんなに大きくないのだけれど...。

 こんなことを考えるぼくはあまのじゃくなのかもしれない。

web『たまてばこ』 No.259 2001-09-10-Mon


新3K

 そのむかし3Kと言われたのが国鉄、コメ、健保。財政赤字の元凶で改革が必要と、さんざんたたかれた。
 とくに国鉄へのバッシングはマスコミの一大キャンペーンとなり、民営化と国労つぶしが一体となってあることないこと書き立てていた。


 このところ新3Kともいえるバッシングがマスコミをにぎわしている。警察、官僚、そして教員の3Kである。

 神奈川県警の一連の不祥事、外務官僚の裏金づくりと郵政官僚の選挙違反、中学校教師の少女監禁致死。どれも許しがたい犯罪であり、弁解も弁護もまったく余地はない。

 しかし、である。
 “ブーム”に便乗したバッシングにつながらないか、不安が胸をよぎる。


 国労つぶしのネタの一つに、勤務時間中の入浴を批判した記事があった。書かれたことを読めばまったくそのとおりだが、車輌の下にもぐりこんで清掃し糞尿まみれになったからだを勤務終了前にきれいにすることが、それほど批判されることなのか。記事にはなぜ入浴が必要なのかは書いていなかったし、そう表明する場も与えられなかった。

 当時、組合員に聞いた話である。まじめに働いている者まで十把一からげにたたかれてと、憤懣やるかたないようすで話していた。


 組織の体質に責任を求め、改革の必要性を叫ぶこれからの報道が目に見えるようだ。
 警察と官僚のことは言うまい。しかし、学校の体質ってそんなにひどいものなのか。

 給食を5分でかけこみ、トイレに行く暇もなく子どもの相手をする。保護者の理不尽な言い分に...あ、これは書かないでおこう...労基法で認められた休憩時間なんてまったく無視されているこの職場に、現場の実態を無視した“改革”がまた押しつけられようとしている。

 みんな一生懸命に働いているんだけどなぁ。

 前号に続き“あまのじゃく通信”になってしまった...(;´д`)

web『たまてばこ』 No.260 2001-09-11-Tue


組体操“TSUNAMI”

「ブリッジ...ピーーー、ピッ」
「倒立...ピーーー、ピッ」
「ピラミッド...ピッ...ピッ...ピッ...ピーーー、ピッ」

 運動会の組体操といえば、ひとむかし前までは号令&笛(またはリズム太鼓)というのが通り相場だった。運動の苦手な子にはおそらく人気のない種目だろう。


 「運動会でいちばん楽しみな種目は?」というアンケートを6年生のクラスでとってみた。男子15人中選択1人(6%)、女子18人中選択13人(72%)という対照的な結果が出たのが組体操だった。
 女子にこれだけ圧倒的な支持を得た理由...それは“TSUNAMI”にちがいない。
(男子は100m走と騎馬戦が選択を二分した)


 音楽にあわせておこなう組体操にとりくんでいる。曲がただのBGMとして流れているだけでなく、メロディーや歌詞にあわせて技が展開していく、組体操的表現、あるいは表現的組体操である。

 選んだ曲が“TSUNAMI”。サザンオールスターズの大ヒットバラードをバックに演技を披露する。
 たとえばサビのところで補助倒立をする。

  ♪ みつめあ〜うと〜すな〜おに〜おしゃ〜べり〜でき〜な〜い〜

 アウフタクトの「みつめ」でふりかぶり、1拍目の「あ〜」で倒立に入る。倒立姿勢のまま「すな〜おに〜」まで8拍2小節静止、「おしゃ〜べり〜」で技を解いて正立する。補助者と交代し、「つ」でふりかぶり「なみの」で倒立、8拍2小節静止、「I know」で技を解く...わかるかな。

 5分と少しの曲にあわせ、1人技9種、2人技2種、3人技2種、5人技2種、そして集団技と展開していく。
 クライマックスは「♪ すきといって〜」のところ。3段タワー4つ、橋4つのほか、飛行機、ピラミッドが運動場いっぱいにいっぺんに完成し、静止する。
 (たぶん)大きな拍手。技を解いて整列。エンディングは1列になって波を表現し、礼。「波乗りジョニー」の軽快なイントロに乗って駆け足で退場する。ふたたび大きな拍手(のはず)。

(ついでに書くと、入場は「勝手にシンドバッド」。担任の趣味まるだしだね)


 2学期になってから2週間ほどの練習でしあげてきた。その成果を発表する運動会本番は明日である。いま降っている雨、早めにあがってほしい。

web『たまてばこ』 No.264 2001-09-21-Fri


勝っても負けてもワッハッハ

 朝の訓示。

「おはようございます。ひとことだけ。たとえ失敗したとしても、仲間を責めるのはなし。やるだけのことはやってきたはず。一生懸命にやりましょう」


 解散前の総括。

「負けたのは悔しいけれど、精一杯やったのであればそれでいい。1組の提案したスローガンのとおり、『勝っても負けてもワッハッハ』だ。
 本番の演技・競技はもちろん、これまでの練習や準備、係の仕事を一生懸命にやってきて、やるだけのことはやったと自分で納得できるなら、勝ち負けを超えたところで、それがみんなの力になるにちがいない。
 もし、もう少し練習しておけばよかった、こうしておいたらもっとできた、という気持ちが残ってしまったならば、次の機会にそういうことがなくなるよう、教訓として生かしてほしい。
 ぼくは“TSUNAMI”の大成功を見ただけで、もうじゅうぶんです」


 どんなことばをかけたとしても、青組優勝に盛りあがる2組の教室の隣では子どもたちの顔がいくらかうつむきかげんになってしまいます。
 応援団長のOくんに前に出てもらいました。

団 長:フレー、フレー、いーちーくーみー!
組 員:フレフレ1組、フレフレ1組!
団 長:ガンバレー、ガンバレー、いーちーくーみー!
組 員:ガンバレガンバレ1組、ガンバレガンバレ1組!
全 員:ウォー、オー!

 団長のかけ声にみんなが応えます。恥ずかしがるようすもなく、明るい声がひびきます。赤組は負けたけれど、クラスがひとつになりました。

組 長:卒業まであと半年、がんばりましょう! また水曜日。さようなら。


 自然にわきおこる拍手、次の技を期待する緊張と静寂、うわーすごいというどよめきと歓声...運動場に“津波”がおきました。
 よかった、すばらしかった、さすが6年生、曲と演技がぴったりあっていた、涙が出そうになった ── 子どもたちが退場すると同時に、たくさんのことばをいただきました。ありがとうございました。(HPにも他学年の保護者の方がメッセージを書いてくださいました)

 5人組の両側倒立は完璧でした。タワーと橋も曲のクライマックスにぴったりそろいました。上の子も下の子も、おたがいを信頼して初めてできる集団演技です。もちろん個人技もこれまでで最高のできばえでした。うんとほめてやってください。

 「波乗りジョニー」で退場していく子どもたちのうしろ姿を見送りながら、ぼくもうるうるじわーっとしてしまいました。感動、達成感、充実感、解放感。気持ちがたかぶり、次のPTA種目に出場する気になりません。綱引きは失礼してしまいました。


 赤組敗軍の将、少しだけ兵を語っておきましょう。

 100m走は68対71で負け。12レース中8レースの1位をとりましたが、いかんせん2位、3位が少なかった。
 「最後に笑うのは?」のゴール、差は5メートルとなかったでしょう。時間にして2秒ほど。惜しかった。2組にあって1組に足りなかったもの、それは担任の強引さかもしれません。
 騎馬戦には脱帽。一騎打ちの強さ(男女とも!)もさることながら、大将戦のねばり強さもみごとでした。教師の指示なしで、子どもたちの判断と協力と結束とがつかんだ勝利です。

 応援団、開閉会式、全校ダンス、全校種目、リレー...全力で表現する子どもたちがとてもかわいく、たくましく、頼もしく見えました。真剣な表情がすてきでした。(ふだんの教室でも見せてくれ!)


 学校の反省会を終え帰宅したのが19時前。ソファにもたれてただボーッとしているだけで、何をする気も起きません。桑田佳祐の声が頭の中をかけめぐり、“TSUNAMI”の情景があらわれては消えていきます。

 ただの疲労感ではありません。心地よい脱力感とでも言いましょうか。この子たちとすごしてきた1年半で3回目の不思議な感覚です。
 最初は市の音楽会が終わったとき、次は6年生を送り出した卒業式のあと。どちらも学年全体で時間をかけてとりくんだ大きな行事でした。そして今回の“TSUNAMI”。 指導する教師の求めるレベルに子どもたちが一生懸命に応えてくれて、大成功をおさめたイベントばかりです。

 つぎにこの感覚を味わうのは来年の3月20日の夜になるはず。もうあと半年なのですね。

*6年1組学級通信『たまてばこ2001』No.124 より


web『たまてばこ』 No.265 2001-09-24-Mon


マゾラさん

「先生、これ...」
「なに?」
「落とし物みたい」

 クラスの子が届けてくれたのは黒いナイロンケース。水筒のようだ。

「どこにあったの?」
「そこの階段のところ。××くんが拾って、オレに渡したんだ」

 落とし物の処理を押しつけられたらしい。

「名前はついてた?」
「うーん、マゾラとか...」
「マゾラ?」
「××くんがそう言ってた」

 「マゾラ」なんて苗字、この学校にいたかな。いぶかりながらケースのジッパーを開く。高さ20センチほどのステンレスボトルが出てきた。

 ケースには名前がついていない。
 本体のボトルをたしかめる。蓋にも胴回りにも記名はない。念のため、ひっくり返して底を見る。小さなシールが貼ってある。漢字2文字で、

「真空」

と記してあった。

web『たまてばこ』 No.266 2001-09-26-Wed


教室版3連休スペシャル

 夏休み最終日以来の教室版をお届けします。


 本の話題から。
 書店でズッコケ文庫の新刊を見つけました。シリーズ第33作に当たります。

  那須正幹『ズッコケ三人組の神様体験』(ポプラ社、600円)

 三人組の住む花山町のお祭りが近づいた。今年はとだえていた舞いを復活させるという。それがハチベエの恐怖のはじまりとなった...。


 う〜ん、これだけではどんなお話かわかりませんね。とにかく読んでみてください。「元気・友情・冒険 全部つまってる!」という帯の宣伝文句どおりの内容です。
 月曜日に教室に持っていきます。最初に手にとるのはだれだ?(予約受付中!)

 シリーズ最新刊第44作『ズッコケ怪盗X最後の戦い』ももうすぐ発売されます。あの怪盗Xとの3度目にして最後の戦い。こんどは怪盗Xがハチベエの前に姿をあらわすそうです。

 みなさんが小学校在学中に出版されるズッコケシリーズはこれで最後になります。すべてのことに“最後の”という形容詞がつく時期になってしまいました。

♪ あのとき あの日の思い出は あしたに強くなるため〜

 明日への思い出をたくさんつくりましょう。(とつぜん感傷的になってしまった...)


 次も本の話題。
 「朝の連続テレビ小説」で読んでいる富安陽子『ムジナ探偵局』(童心社、1200円)の第2話がそろそろ完結します。アブの暗号メッセージの謎もいよいよ月曜日に明らかに...。

 この暗号、教室で出したヒントをもとに“鳴き竜くん”がこんなことを考えつきました。

 『銀河鉄道の夜』と『変身』から「鉄」と「変」を抜き出して「○っ○○」と読む。

 こう解いたのです。ほとんど正解! おみごとです。暗号解読の名人はパスワードシリーズのマコトか飛鳥といったところでしょうか。“鳴き竜くん”とイメージ違いすぎる?

 では、あと3冊の書名をどう読むか。

  『書斎の死体』(アガサ・クリスティ)
  『エジプト十字架の謎』(エラリ・クイーン)
  『怒りの葡萄』(ジョン・スタインベック)

 ヒントは「絵本が見つかった場所」です。パスワード探偵団諸君、解けるかな。


 さらに本の話題。
 『ムジナ探偵局』の次に読む本を決めました。

  後藤竜二『12歳たちの伝説』(新日本出版社、1500円)

 “パニック学級”と呼ばれるほど荒れている6年1組に、新しい担任の先生がやってきた。新任の若い女の先生。教室に入ってきた先生は、1メートルもあるゴリラのぬいぐるみをかかえている。
「ちょっと、聞くけどさ、あんた、ほんとに、先生? 学校にそんなもの持ってきていいと思ってるの?」
 へりくつ好きのハヤちゃんがさっそく先生につっかかった。先生をやっつければだれでも人気者になれる。5年生の1年間に担任が5人もかわったクラスの手荒い歓迎が始まった...。


 本のまねをしてみんなが荒れたらどうしよう、なんてことも考えました。が、今の6年1組ならだいじょうぶでしょう。近いうちに「図書室」に紹介文を載せます。読んでみてください。


 本の話題を書いているうちに長くなってしまいました。今日はこのへんでおしまいにしておきます。

 ズッコケ文庫の新刊を読みたい人、アブのメッセージが解けた人、ひさしぶりにチャット大会を開きたい人、連休が暇で暇でしかたがない人、掲示板に書き込むかメールを送ってください。

 では、3連休のこり半分、くれぐれも「4つの車」のお世話にならないように。

web『たまてばこ』 No.282 2001-11-24-Sat


芋蔓

「・・・というようなことが子どもたちの中にあるみたいなんです。いちおう先生にお知らせしておいた方がいいと思って...」
「話してくださってありがとうございました。ぼくのまったく知らないことでした。明日にでも事情を聞いてみます」

 きっかけは個人面談でうかがったちょっとした情報だった。


 名前のあがった子から話を聞いてみた。すると、関係する別の子の名前が出された。その子を呼んで話を聞くと、さらに別の子の名前が出てきた。
 聞けば聞くほど新しい名前があがり、これまで知らなかった情報がわかってくる。詳しい事情も見えてくる。芋蔓(いもづる)式とはまさにこのことを言うのだろう。

 いったん手にした芋蔓なので、途中で切れないようにていねいに、しつこく掘りつづけていった。小さな芋、大きな芋が土の中からゴロゴロと出てきた。

 そしてとうとう“金鉱”を掘りあててしまった。とんだ“金鉱”だった。


 個人面談を終えたあと、家庭訪問に出かけた。17時に学校を出て9軒。最後の家庭を辞したのは21時半をまわっていた。
 8人と面談したあと9軒の訪問。半日でクラスの半数以上の保護者と話したことになる。

 子どもたち一人ひとりに事情を聞き、多くの保護者とつっこんだ話をした。子ども、保護者、担任のあいだの考え方のちょっとした違い、コミュニケーションの不足が今回のできごとにつながっていることがわかってきた。

 とりあえず解決はした。気の重い数日間だった。精神的にも肉体的にもぐったりしてしまった。


 見逃してしまえばそれっきり埋もれてしまったに違いない小さなできごと。あえて掘り返さなくても3月の卒業式を迎えられたかもしれない。

 でも、いちど手にしてしまったからには担任として知らぬ顔はできない。もう1ピース、もう1ピースと部品をさがしパズルを組みたてていくうちに、行き着くところまで行き着いてしまった。

 パズルが完成したのはうれしいが、はたしてこれでよかったのだろうか。


 教室で最後の“しめ”をしたときのことをこんなふうに書いてくれた子がいる。

 こうして帰りのしたくをしてから先生が15分も時間をとったり、めったにしないというのに授業をつぶしてまでも一人ずつ面談をしたりと、〜について話があった。
 何十人の生徒を先生一人でうけとめている。先生って大変だなぁと思った。
 先生の言葉で印象的だったのは...。


 当事者ではない子もこうして真剣にうけとめてくれている。やはり見過ごしにしなくてよかった。

 さて、気をとりなおして学期末の事務処理(=通知票)にとりかかるとするか。

web『たまてばこ』 No.284 2001-12-08-Sat


「最後の」土曜日

 授業をする“最後の”土曜日である。

 “2学期最後の”ではない。大げさに言えば“教師生活で最後の”土曜日である。


 現在の土曜日は、第1と第3、第5が授業日、第2と第4が休業日となっている。学校ありと学校休みが1週おきにやってくるカレンダーである。
 それが、2002年4月からは完全学校5日制となり、すべての土曜日が休みになる。ということは、3月16日の第3土曜日をもって小中学校から土曜日の授業が消滅することになる。

 ではなぜ今日が“最後の”土曜日なのか。


 勤務校では、完全学校5日制の試行として、3学期に5回ある第1、第3の土曜日も先取りして休みとすることにした。

  1月12日:第2土曜日 〜 もともと休み
  1月19日:第3土曜日 〜 試行で休み
  1月26日:第4土曜日 〜 もともと休み
  2月 2日:第1土曜日 〜 試行で休み
       ・
       ・
       ・
  3月16日:第3土曜日 〜 試行で休み

 つまり、3学期の土曜日はぜんぶ休み、というわけである。


 もちろん、ただ“休み”にするわけではない。「自己学習の日」と位置づけて家庭でのすごし方を考えさせたり、カットされる授業時数を確保するため平日に6校時を実施したり、などの手だてはとる。当然のことながら職員は出勤日である。

 それでも、土曜日に子どもが学校からいなくなることに変わりはない。すなわち、土曜日には授業がない。

 だから、今日が最後の、それも“教師生活で最後の”土曜日であった。感慨無量。

web『たまてばこ』 No.286 2001-12-15-Sat


有害サイト

 学校にPCが配置され、インターネットができるようになった。
 配置されたPCのとんでもない廃スペックぶりは こちら をお読みいただくとして、今回は「フィルタリング」について少々。


 本校のインターネットはCATV経由。流行の最先端、ブロードバンドである。実測で1.8MBの回線速度が確保されている。クリック一発スイスイサクサク...と書きたいところだが、廃スペックがたたって一般のアナログ回線なみにしかならない。

 それでもなんとか実用には耐えられる。子どもたちはあちこち検索して楽しんでいる。


 ここで問題が生じる。PC&インターネットは自由に使える。その部屋に教師が常駐しているわけではない。となると、あやしげなサイトを子どもが見ないともかぎらない。その意識がなかったとしても、リンクをたどっているうちにアブナイHPが開いてしまうこともありうる。
 どうしたらよいか。

 およそ学校に配置されているPCからのインターネットアクセスには、なんらかの制限が設けられている。これをコンテンツフィルタリングといい、本校(=本市)の場合もサービス会社と契約している。
 これにより、一定の条件でふるいにかけられた一部のサイトは閲覧不可となる。有害サイトを子どもたちが見ることはできなくなる。

 一定の条件 ── たとえば「アダルト」「出会い」「暴力」「薬」などのキーワードを設定し、それが含まれるサイトは閲覧できない、ということである。


 学校のPCから「おふぃす ひげうさぎ」にアクセスした。表示速度が遅いのは廃スペックゆえにしかたがない。なめらかにスクロールするはずの「天声新語」も動いたり止まったり。あきらめるしかない。

 メニューから「たまてばこ」を開く。OK。「カレンダー」も表示される。3つの黒板(掲示板)も順調。ためしの書き込みも問題ない。

 続いて「6の1 クラスのアルバム」をクリック。写真をみんなで見ようと...開かない。いつものページが表示されない。「ギャラリー 図工作品集」も同様。何度ためしても下記のような画面があらわれてしまう。

  このサイトへのアクセスはできません

  コンテンツフィルタリング   べス

          ネットワーク管理者


 コンテンツフィルタリング──有害サイトをシャットアウトするサービス。ということは「クラスのアルバム」も「図工作品」も有害サイトなのか...。

 6の1のみなさん、みなさんの写真は“有害”だってさ!


 UPしてある写真が“有害”ということはもちろんない。利用しているもう一つのアルバムサービスのサイト(写真集「オアフの風」)は閲覧することができるのだから。

 クラスの写真に利用しているアルバムサービスのサイトがなんらかのアクセス禁止要件にひっかかっている、それが真相のようだ。

 いろいろためしているうちに「ちゃっとるーむ」もアクセス禁止であることがわかった。パスワードからログインする My Yahoo! もだめ。

 ネットワーク管理者によると、各校ごとにアクセス禁止を解除することはできないとのこと。申請して特定のサイトだけアクセス禁止を解除してもらうこともできないという。かい  これではインターネットのおもしろさが半減してしまうではないか。

 そこで、ただいま抜け道調査中。うまくいくかどうか。

web『たまてばこ』 No.288 2001-12-22-Sat


サヨナラのかわりに

  サヨナラのかわりに

BANANA ICE 作詞・作曲


  あのときあの日の思い出は
  あしたに強くなるため
  旅立つ季節は 涙見せずに
  ありがとう

  最後のチャイムが 校庭にひびくときが
  つらかったできごとも 微笑みに変わる今は

  転んだときには 手をさしのべてくれた
  できなかったときにも だれかに助けられてた

  いたずらもやりすぎて こわくなって
  逃げ出した夜の校舎
  わすれないよ ずっと

  にぎやかだった教室には
  さよなら夕陽が染まる
  「はじめて」をたくさんくれた先生
  ありがとう

  交換したノートで 悩みも打ち明けたけど
  どんなときもがんばれた 友だちがそばにいたから

  けんかした放課後には ひとりぼっち
  泣いてたこともあったけど
  わすれないよ ずっと

  あのときあの日の思い出は
  あしたに強くなるため
  旅立つ季節は 涙見せずに
  ありがとう

  それぞれに道はわかれても
  夢はわすれないでいよう
  いつかまた会える日まで みんなに
  ありがとう

  ラララ ララララ ラララ ラ ララ
  ラララ ララララ ラララ ラ
  ラララ ララララ ラララ ラララララ ララララララ

  あのときあの日の思い出は
  あしたに強くなるため
  旅立つ季節は 涙見せずに
  ありがとう

  サヨナラのかわりにするよ
  みんな
  ありがとう



 詞がいい。

  最後のチャイム
  できなかったとき
  にぎやかだった教室
  交換したノート
  けんかした放課後


 どのことばもとても具体的だ。具体的だけれど、限定されていない。歌う子どもたちそれぞれに自分なりの思い出のシーンがよみがえってくる、そんな具体性をもっている。

 “先生への感謝”を押し売りしていないところも気に入っている。「仰げば尊し 我が師の恩」なんて歌った日にゃ、卒業記念の紅白饅頭じゃあるまいし...和菓子の恩、なんちゃって。

 なによりも、タイトルになっているこの曲のメッセージがすてきだ。サヨナラのかわりにするのは「ありがとう」。 別れのことば、最後の言葉は「じゃあね」でも「またね」でもなく、「ありがとう」。

 二部合唱にしあげるまでかなりの練習が必要だろう(なんてったって“ひげ”が指導するんだからね)。でも、歌詞に“思い”がこめられる曲だから、いやいや歌わされてるという気持ちにはならないはず。なんのために歌うのか、どういう気持ちで歌うのか、それが子どもたちに伝わるにちがいない。


 明日から3学期。卒業へのカウントダウンが始まる。

*メロディを聴けるサイトがあります。リンクは こちら から。


web『たまてばこ』 No.295 2002-01-07-Mon


ウサギとカメ

 亀と兎が速さのことで争いました。そこで彼らは日時と場所とを定めて別れました。
 ところが兎はもって生まれた速さを恃(たの)んで駆けることを忽(おろそ)かにし、道をそれて眠っていました。亀の方は自分の遅いのをよく知っていましたから、休まず走りつづけました。
 こうして亀は眠っている兎の側を走り過ぎて目的に達し、勝利の褒美(ほうび)を獲(え)ました。

山本光雄訳『イソップ寓話集』(岩波文庫)


【解釈その1】

 この寓話は教えている。いくら恵まれた能力があっても、油断や慢心があれば負けることもある。努力を怠らず精進しなさい、と。
 お得意の四字熟語で表現すれば「油断大敵」といったところか。

 この話の明らかにするところは、生まれつきがゆるがせにされると、それはしばしば努力に打ち負かされるものだ、ということなのです。(同書)

 イソップ自身がこうしめくくっているとおりだ。


【解釈その2】

「カメさん、なぜ寝ているウサギを起こしてやらないのかね。黙って横を通りすぎるなんて、友だち甲斐のないやつだ」
「そうだそうだ。もしかしたらウサギは病気で寝ていたのかもしれない。声をかけてやるのが友だちってものだろう」

 努力して最後まで走りぬき、勝利を手に入れたカメへの言いがかり的解釈。「友情」を考えるにはいいかもしれないが...。
 ちなみに、これはインドに伝わる話らしい。


♪ もしもしかめよかめさんよ せかいのうちでおまえほど 〜 

 こんな童謡があるので「ウサギとカメ」は日本の昔話だと思っているかもしれない。しかし、まぎれもなく紀元前6世紀、古代ギリシアのイソップの作。それも「イソップ童話」ではなく「イソップ寓話」である。

 ぐうわ[寓話] 教訓や処世訓・風刺などを内容とし,動物や他の事柄に託して語られる物語。

 くりかえす。これは「油断大敵」という教訓を教えるための小話である。だれがどう言おうと、イソップの「ウサギとカメ」はそれ以外に解釈のしようがない。
 そのことをふまえたうえでなら、「寝ていたら起こしてやるのが友だち」という友情物語風に読むのもいいかもしれない。
(ガッコの先生が好きそうなんだな、そういう話。「困っている友だちに声をかけてあげなさい」って、ことあるごとに説教してるから)


【解釈その3】

「ウサギとカメが競争してはいけないんだ!」

 3学期の始業式。「ウサギとカメ」をネタに校長が話している。

「ウサギにはウサギの、カメにはカメのよさがあるんだから。カメは遅くていいの。ほかに持ち味があるでしょう。ウサギと競争しようなんて思っちゃいけないんだよ」

 新釈登場...なんて茶化すつもりはない。この読み方には驚いた。ウサギとカメが競争することの妥当性を問いかけることなど、考えたこともなかったからだ。目からウロコがぼろぼろと落ちた。


 ところで、あなたはどの解釈がお気に入り?

web『たまてばこ』 No.296 2002-01-09-Wed


雪の日ルール

 冬になるとかならず「雪の日ルール」の話をする。

第1条 雪が積もった日で学校がある場合には、雪合戦のしたくをして登校する。

第2条 雪合戦ができる状態のときは、最低2時間「雪合戦の授業」をする。

第3条 雪合戦はクラス全員参加でおこなう。


 子どもたちはマフラーに手袋、帽子は当然のこと、スノトレ、オーバーパンツ、スキージャンパーなどに身をかため学校にやってくる。低学年だと替えの下着やくつしたも必需品。

 年に1度の積雪があるかないかという比較的温暖な地域なので、せっかくの機会をみすみす逃してしまうのはもったいない。
 2時間も雪で遊べばじゅうぶん満足する。国語や算数の2時間では得られないことが経験できるはずだ。


 現任校に来て3年。まだ「雪の日ルール」を適用したことはない。2年前は遊べるほどの降雪がなかったし、昨年度はせっかく積もったのに日曜日だった。

 それ以前にも、降ったのが休み中だったり、条件はそろったが積雪が多すぎて臨時休校、なんてこともあった。前に6年生を担任したときは2月1日が大雪で、私立中学受験組の消息を気づかいながら雪を投げていたのを思い出す。
 なかなか“雪合戦日和”にはめぐりあえないものだ。

 さて、今シーズンは「雪の日ルール」が適用できるだろうか。


 今朝は冷え込みがかなり強く、空は雲におおわれている。鬱陶しく重たい感じがする。
 今晩の予報は雪...でも、明日は日曜日だなぁ。

web『たまてばこ』 No.298 2002-01-26-Sat


もっと遅くていい

「もっと遅くていい」

 すべてはこのひとことから始まった。


 勤務校の6年生「お別れ遠足」、例年はバスでディズニーランドに行く。

   8:00 学校発
  10:00 入園、園内自由行動
  15:00 集合
  17:00 学校着、解散


「せっかくシーがオープンしたから...」
「シーにしようか」
「いいねー」
「3時に帰ってくるのももったいないよね」
「そうだね。もっと遅くてもいいけど、6年生で何時までいられるかな」
「5時集合がいいとこかね」

 2学期の中ごろだっただろうか。学年で相談していたところに、近くで聞いていた校長先生がくわわった。

「お別れ遠足、どこ行くの?」
「今年はディズニーシーにしようと思ってます」
「いいねー」
「少し遅くまでいたいんですけど、いいですか?」
「遅いって、何時ぐらい?」
「いつもは3時集合で5時には学校に着いて解散なんですが、5時ごろまで遊んできたいと思って...」
「え、5時? そんなに早く帰ってきちゃうの? つまんないじゃん。せっかく行くんだから、もっと遅くていいよ」
「ほんとにいいんですか?」
「いいよいいよ。いろんなことやってみようよ。なんかやらないと、学校、変わらないよ」


 それでも、夜の7時まで遊んでくるのは無理があるだろう。「17時集合・19時解散」の案を保護者会に提案することにした。学校がその気になっても、保護者に後押ししてもらえなければ無用の軋轢を引きおこしかねない。手順をふんで、慎重にすすめよう。

「2月のお別れ遠足、例年より少し遅くまで遊んでいたいので、こんな計画を考えています...」

 おそるおそる話を切り出してみた。うなずいている顔が多い。これならいけそうだと内心ホッとしているところへ、こんな声も聞こえてきた。

「もっと遅くていいですよ」
「え? 遅いって...」
「最後まで」
「そこまではちょっと...でも、遅くてもいいということであれば、また検討してみます」

 子どもたちの最後の思い出づくりに、保護者からもゴーサインが出た。案じるより豚汁、じゃなかった、案じるより産むが易し、心配は杞憂にすぎなかった。


 かくして、下見と当日のショースケジュールをもとに、18:30の「ディズニーシー・シンフォニー」を見てから帰ってくるという大胆な計画が決定した。

   8:00 学校発
  10:00 入園、園内自由行動
  19:00 集合
  21:00 学校着、解散


 安全確保のためにじゅうぶんな体制をととのえるのは当然のこと。引率する職員全員がケイタイを携帯しいつでも連絡がとれるようにする、14〜15時のあいだに担任のケイタイに定時連絡をする、帰りのバスで軽食を用意する、保護者にかならず迎えに来ていただく...。

 市内のいくつかの学校でも同じような日程を計画したらしいが、諸般の事情で(これは書けない...)実現しなかったという。学校と保護者の思いがひとつになって実現した幸運な計画だった。


 2月15日(金)19:00。夕闇にカクテル光線が浮かびあがる駐車場。バスは「シンドバッドの13番」にとまっている。

 「ディズニーシー・シンフォニー」を堪能した子どもたちがバスにもどってきた。いい顔をしている。丸一日遊んだ思い出を語りあう声がバスの中にあふれかえる。

 無事終了。大胆な計画、やってよかった。

web『たまてばこ』 No.305 2002-03-01-Fri


新しい祝日

「知っている『国民の祝日』を2つ書きなさい」

 小学校高学年のクラスで質問した。選択肢はないが、年間に14ある祝日のうち知っている2つを書けばよいのだからさほど難しくない、はず...。

 結果、不正解以外はすべて正解 ── なんのこっちゃ。
 2つとも書けた子はもちろんたくさんいたが、空欄のまま未記入の子も、記入した答えが正しくない子もいた。その“不正解”にあった誤答・珍答をいくつか。


 多かったのが「母の日」と書いたもの。5月の第2日曜日だから毎年かならず休日ではある。子どもにとって、「母」は「国民の休日」にあたいする特別な存在なのだろう。
 解答欄2マスに「父の日」「母の日」と自信満々の文字で記入した子が1人。「父」を忘れない君はえらい!

 正解の「こどもの日」を書いた子は多かった。が、そのとなりに「ろうじんの日」と書かれると、ちょっと複雑な気持ちになる。

 「ひなまつり」という答えは、調査時期が2月後半だったからか、学校に7段の雛人形が飾ってあるのを思い出したからか。今年の3月3日(=今日)は日曜日なので、これもたしかに休日ではある。

 季節ものでは「クリスマス」もあった。書いた子は長く海外で生活していた帰国児童だった。

 頭をひねったのが「健康記念日」という珍答。おそらく「建国記念」を聞き間違えたか書き間違えたかしたのだろう。

 最後にきわめつきの珍答「ゴールデンウィーク」。気持ちはわかる。4月29日から5月5日の1週間で「国民の休日」が4つ、日曜日や振替休日が入れば5連休もありうるわけで、どの日がなぜ休みなのかなんて子どもにとっては関係ないのかもしれない。


 それにしても、「国民の祝日」がたった2つ正しく書けない6年生って、学校でいったいどういう教育を受けているのだろう。担任の顔が見たい。(←あ、オレだ!)

web『たまてばこ』 No.306 2002-03-03-Sun


校内ラン

 学校に配置されたPCのとんでもない廃スペックぶりは こちら に書いた。せっかくのブロードバンド=ケーブル回線でつながったインターネットの不便さは こちら に書いた。
 3回めの今回は「校内ラン」について少々。


 廃スペックPCとは別に、つい最近教室に配置されたPCは正真正銘のハイスペックである。最新のA4ノートが1台、児童用机に乗っている。これならメールもインターネットもすいすいサクサクだ、“有害サイト”へのアクセスが禁止されている以外は。

 ところが、である。各教室に1台ずつ、学校全体で12台の最新PCにたいして、配置されたカラーインクジェットプリンターは3台だけ。一対一ならぬ一対四対応なので、当然のこと置き場所が問題になる。どこか3学級だけプリンターつき、というわけにはいかない。

 考え出された苦肉の策は、余裕教室にプリンター3台をまとめて設置し、校内に張りめぐらされたケーブルによって各教室のPCとつなげる、というもの。つまりは「校内LAN」である。
 これで、3台のプリンタがそれぞれ4教室ずつPCとつながることになった。

 するとここで次の問題が生じる。プリンターがあるのは北棟3階中央にある教室。各教室のPCから出された「印刷(P)」の命令は、LANケーブルを伝わって北棟3階中央にある教室のプリンターに送られ印刷が開始される。首尾よくプリントアウトされた紙は、LANケーブルを伝わって各教室に戻ってくる...わけはない。

 しかたがない、教室にいる子どもに命令が伝えられる。

「印刷した紙、取ってきて!」

 命令を受けた子は北棟3階中央の教室にむかう。
 印刷された紙を手にして戻ってきた子どもの息があがっている。一生懸命に走って取りに行ってきてくれたのだろう。つまりは「校内RUN」である。

 おあとがよろしいようで、チャンチャン。

web『たまてばこ』 No.307 2002-03-06-Wed


ヘルメットの中の鼻歌

 愛車のスクーター=ジョルノにまたがり、家を出て数十秒。メインストリートに出て最初の信号にさしかかったところでイントロが鳴り、歌い始める。

  ♪ あのときあの日の思い出は〜

 卒業式で6年生が合唱する「サヨナラのかわりに」(⇒ No.295 参照)という曲である。

 歌を口ずさみながらジョルノを走らせる。♪=104の速さで4分40秒ほどの曲。川沿いの一本道を信号にかからず走り抜けると、勤務校直前の交差点あたりでちょうどピアノのコーダが響き、歌い終わる。

 昨年の11月後半、卒業式でこの曲を歌うこと(=指揮をすること)が決まってから、ヘルメットの中の鼻歌が出勤・退勤のたびにくりかえす日課となった。
(歩行者も自転車の人も、歌いながら走り去る黄色いスクーターに驚いているだろうな)

 二部合唱なので、朝はソプラノパートで帰りはアルトパート、あるいは前半はソプラノで後半はアルト...さまざま歌いながら曲をイメージしていく。
 トシのせいか覚えが悪いので、なかなか歌詞が出てこない。
 もともとオンチなので、なかなか音がとれない。
 それでも、歌い始めて3か月。ようやく曲になり、指揮がイメージできるようになってきた。

 卒業式まで一週間。練習も佳境に入り、“ヘルメットレッスン”も4回と半日を残すだけとなった。別れのときが近づいた。

web『たまてばこ』 No.309 2002-03-13-Wed


別れの終章

 10年前の3月、担任した2回目の6年生が卒業していった。
 “二代目”と命名したこのクラス。いいクラスだった。すてきな子どもたちだった。あらゆる面で、これ以上のクラスはできないと思っていた。しばらく高学年は担任したくないと思うほど、充実した2年間だった。

 2年前の4月、進級したばかりの君たちと出会った。5年1組の教室だった。
 3回目の高学年。6年生まで持ちあがれば、三代目の卒業生となるはずの君たちとの出会いだった。
 正直に言おう。君たち三代目は、二代目のクラスにはかなわないだろうと思っていた。あのときがすばらしすぎたから、二代目以上の子どもたちがいるなんて、想像することもできなかった。

 あれから2年がすぎた。
 いま、自信をもって言おう。君たち三代目は二代目をはるかに凌駕したと。

 卒業式の会場壁面を飾る自画像はどうだ。どれひとつとして手をぬいて描いたものはない。みな、澄んだ瞳でまっすぐ前を見つめている。鏡の中の自分と向きあって描いていたときの真剣な表情が、絵に正直にあらわれている。
 クラスのまとまり。高学年でこれほど仲のよいクラスをほかに見たことがない。一部がというのでなく、みんながみんな声をかけあえる、いっしょに遊べる、思いやれる...。
 体育館のドッジボール、運動場のサッカー。いつも男女まじりあっていっしょに遊んでいる姿がまぶしかった。
 縄跳び大会のときも、お別れ遠足のときも、“7人”発表のときも、いつもだれかが友だちのことを考えてくれていた。


 5年生の秋、一つの選択肢が提示された。翌年度、6年生を担任せず、別のところで働いてみないか、という誘いだった。
 ようやく半年をすぎたばかりのところ。まだ海のものとも山のものともつかない君たちだったから、あっさり次の担任に任せてしまうことも可能だった。
 迷わなかったと言えば嘘になる。迷った。迷ったけれど、君たちを選んだ。

 5年生の秋から始まる行事のオンパレード。玉小祭、音楽会、縄跳び大会、送る立場の卒業式...。行事を終えるたびに、君たちはどんどん成長していった。一人ひとりに力がつき、クラスとしてまとまっていった。もしかすると、二代目を越えられるかもしれない。そんな気さえしてきた。

 そして持ちあがり、1年がすぎ、今日、卒業式を迎える。
 君たちを選んでよかった。


 最後にひとつ、教師くさいことを言うのを許してほしい。

 6年1組はたしかにすばらしいクラスだった。だから中学校での新しい生活が不安だという気持ちもよくわかる。
 でも、よく考えてほしい。このクラスをつくりあげたのは、担任ではなく、君たちなのだ。どこの教師だって「仲良くしなさい」ぐらい言うに決まっている。それに誠実にこたえてくれたのは、君たちなのだ。

  友だちがあなたに声をかけてくれたのは
  あなたが友だちに声をかけたから
  友だちがあなたを気づかってくれたのは
  あなたが友だちを気づかったから
  友だちといっしょに遊べたのは
  あなたが友だちを誘おうとしたから


 あえて言おう。「6年1組」をふりかえるな!
 ふりかえる必要のないほどすばらしい友だちを、生活を、楽しいときを、自分たちの手でつくりだせ!


“三代目”6年1組のおきて

その1:同窓会はディズニーシーで!
 言うまでもない。元担任はご招待、かな?
 いや、担任ぬきでいい。みんながそろったとき、初めて「お別れ遠足」がやりなおせる。
 それまでは、体育館でバスケかドッジ、運動場でサッカー。BGMはもちろんサザンの...。

その2:タバコを吸ってはいけない!
 これも問答無用。わがままで勝手なことばかり言っていた元担任の最後の妄言だと思ってくれ。

その3:最初の給料はご両親に 最初のボーナスは先生に!
 ハハハ、冗談。酒は飲めないから、どこかでうまいラーメンでもいっしょに食おう。それまでに「1、1、9、9」の問題が解けたら、ぼくのおごりだ。


 いまから1時間後、卒業式がはじまる。もう担任に頼ることはなにもない。君たち一人ひとりが主役なのだ。6年間のすべてを出しきって、かっこよく卒業していこう。

 この『たまてばこ2001』No.260をもって、2001年度T小学校6年1組のすべての教育活動を終了する。

  ありがとう
  すばらしいクラスをつくりあげた
  すてきな仲間たちに
  ありがとう



 最後になりました。
 おあずかりした大切なお子さんを、いまお返しいたします。
 いたらぬところ、不十分なところ、多々あったことと思います。いまは皆様のご寛恕を願うのみです。
 2年間、ほんとうにありがとうございました。

*6年1組学級通信『たまてばこ2001』No.260=最終号 より


web『たまてばこ』 No.311 2002-03-20-Wed